『涼宮ハルヒの動揺』 鶴屋さんの違和感
シリーズ第6作、短編集です。いつものようにそれぞれの作品についてまず書いてみます。
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/03/31
- メディア: 文庫
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ライブアライブ
アニメ化された文化祭当日のエピソード。このエピソードは小説よりもアニメの方がより深い話になっていると感じました。文字では表現できない音楽を実際に作ったのはすごい。
人気がある鶴屋さんのせりふ、「めがっさにょろにょろ」はこの作品から来てるんですね。原作にもあったんだなぁ。
朝比奈ミクルの冒険 Episode00
テレビアニメ第一話。えー・・・これを忠実にアニメ化して、しかも第一話に持ってきたってのがすごいです。アニメを先に見た人には虚構の入れ子構造ってことが本能的に理解できる。
ヒトメボレLOVER
長門有希がメインのこの話。作品世界が外に向かって広がっています。この話で一つ印象的な台詞がありました。
「ど……」
ヒロイン涼宮ハルヒの台詞です。「ど」で止まっているところがね。作者が考えていることが珍しく表に出たかなと。
自分の思い通りになることに慣れている少女、涼宮ハルヒの臆病さを演出したせりふかなと素直に読むと思えます。本の表題『涼宮ハルヒの動揺』はここが出展かなと感じました。
猫はどこへ行った?
この話、かなり好き。この話というかこのトリック好き。気に入った。長編推理小説にはなり得ないとは思う。でもメイントリックとしてしっかりしている。孤島症候群よりミステリーとしては格段に上だと思います。
そして、鶴屋さん。彼女は作中で異質な登場人物です。物語的には主人公、ヒロインに続いて三番目に重要だと思っているんです。鶴屋さんと出会った後と前でハルヒは変わったと思うんですよね。今までにも登場機会はあったけれど、どの場面でも微妙な違和感があります。根本的なところはハルヒと共通しているのに、全てを受け入れ、全てを楽しんでいる。そんな彼女をみてハルヒはどう感じているのでしょうか?
朝比奈みくるの憂鬱
キョンがステップアップした話。そして「ヒトメボレLOVER」同様、ハルヒが状況にいらだちつつも楽しんでいる話。ハルヒの笑顔はアニメで見た印象が強いですねぇ。怖いよねぇ。
さて、まとめの前に俺がとらえている「涼宮ハルヒシリーズ」の世界観をまた書いておきましょう。
この一冊だけについていうのなら、「微妙に非日常」な作中世界を理屈抜きに楽しむのが正しい読み方なのかなぁと思いますが・・・
レベル5 | 作中作 | ||
---|---|---|---|
レベル4 | この小説でえがかれている世界 | ||
レベル3 | 考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒの世界 | ||
レベル2 | 考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒを想像した何者かがいる世界 | ||
レベル1 | 作者や俺たちが住む現実世界 |
このレベル分けが実際問題作品と矛盾していないのかどうかはちょっと怪しくなってきていますが、準拠して考えるのならばこの一冊でえがかれているのはレベル4の世界です。
このシリーズが進んで行くにつれて顕著になっているのが、レベル3とレベル4の分化です。レベル3にいるのは涼宮ハルヒという少女だけなので、涼宮ハルヒの分化と言ってもいい。
『涼宮ハルヒの憂鬱』では、レベル4のハルヒは作中世界Aでレベル3のハルヒを内包していました。(以下、ハルヒ(4)Aはハルヒ(3)を内包しているという表現にします。)そして、別の作中世界Cを作るにあたって、主人公キョン(4)を道連れにします。なぜキョンが道連れになったのか、それはまだ作中では語られていません。
『涼宮ハルヒの消失』では、また別の作中世界Bというものができていて、その世界から作中世界Aに戻るまでがえがかれています。この世界ではハルヒ(4)Bはハルヒ(3)を内包していません。
今日感想を書いた『涼宮ハルヒの動揺』では、レベル3のハルヒの力というのは表面上ほとんどえがかれていません。レベル3のハルヒをコントロールするレベル2について想像できるようなエピソードも目に付きません。しかし、ハルヒは力を持っている。力を失うということは、それはこのシリーズが終わることを意味しています。
出版されているシリーズ作品は後2作。前にも書きましたが、鶴屋さんという「もう一人のハルヒ」的な登場人物、そして、意外と重要な役割を持っている予感がするキョンの妹に注目して読んでいきます。
が、続編が入手できません。今日神保町に行ってみるつもりですが、無かったら来週はお休みかもしれません。
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記事カテゴリー 涼宮ハルヒシリーズ
カテゴリ 読書感想文
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