『涼宮ハルヒの陰謀』 かわいい策士

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)

さて、例によってざっくりとしたあらすじから。


主人公キョンは、12月に迷い込んでしまった、ヒロイン、涼宮ハルヒが自分が知っているハルヒでなくなってしまっている世界から元の世界に戻るために必要なことをしなければならなかった。
なんとかそれをクリアし、世界を元に戻すと今度は節分という一大イベントが待っていた。なぜ一大イベントなのかはハルヒのみぞ知る。彼女は日本の風習を全てクリアしておかないと気が済まないたちのようだった。
そんなのどかな2月、突然思わぬ来訪者がやってくる。超近未来からやってきたかわいい先輩兼未来人朝比奈みくる。今の時間を暮らしているみくると顔を合わせないために、ハルヒが作った謎のサークルSOS団の読書係兼宇宙人長門有希の助けも借り学校から外に近未来みくるを連れ出すキョン。聞けば近未来のキョンがみくるにこの時間に来るよう指示したらしい。
そして、成長した未来の朝比奈さんのからのどう考えても一見意味がないように見える課題を近未来みくるとともにクリアつつ、ハルヒの思いつきとしか思えない街の探索や宝探しにつきあって、寒い2月を過ごすキョン
なぜみくるはこの時間にやってくる必要があったのか。そしてSOS団謎の転校生兼超能力者古泉一樹はどうでるのか?




この本を素直に読むと、まさに「微妙に非日常」な学園SFです。そしてラブコメ要素が強い。落ちのネタバレになるので書けませんけど。サブタイトルから察してください。
今回も俺がとらえたこのシリーズで描かれている世界観を書いておきます。

レベル5   作中作
レベル4   この小説でえがかれている世界
レベル3   考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒの世界
レベル2   考えていることを現実にする力を持つ少女、涼宮ハルヒを想像した何者かがいる世界
レベル1   作者や俺たちが住む現実世界

この世界観のうち、特にレベル3の提示がなければ『涼宮ハルヒの陰謀』は極普通の学園ラブコメSF風味だと思います。
涼宮ハルヒの陰謀』で描かれている世界はレベル4の世界です(Aとします)。冒頭でキョンがみくる・有希とともに訪れたのはレベル4の別の世界(Bとします)です。
Aではハルヒはそうとは知らずに世界を「自分の思い通り」にしてしまっていますが、Bではその力を持っていません。しかし、素直に読むと、AもBもレベル3のハルヒ(以下ハルヒ(3))が生み出した世界なので、違いはレベル4Aの世界のハルヒ(以下ハルヒ(4)A)はハルヒ(3)を内包というか投影していて、ハルヒ(4)Bは投影していないというところになります。
このシリーズが進んで行くにつれて顕著になってくるところがあります。それはハルヒ(4)Aの「思い通りにならない世界」を作ろうとする他のレベル4A世界の住民の意図です。そして、重要なのは、それをハルヒ(4)Aも楽しんでいる節がある。これを繰り返すことによってハルヒ(4)Aが、実は自分が望んでいるのは自分の思い通りにならない世界であることに気づいて、ハルヒ(3)の存在意義が無くなる。そうするとハルヒ(4)Aが普通のフィクション同様レベル2に降りてくるのではないか、そのときに物語が終わるのではないか、それが俺の予想です。


登場以来何度も書いていますが、この作品でSOS団の5人の次に重要なのは鶴屋さんです。彼女はもう一人のハルヒ。思い通りにならないことを楽しんでいるハルヒ。不思議なことがあったら首を突っ込むのではなく傍観して楽しむハルヒ
その読みには少し自信を失いました。もしそれが正しければ、レベル4Aの世界ではあまり重要な役割を任せられないはずです。あくまでも傍観者。それが俺が鶴屋さんを重要だと考える理由です。当事者になってしまったら、その読みは間違えていると思います。


さて、ようやくあと一作になりました。その感想は来週。全部読み終わっての感想は再来週に書く予定です。


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記事カテゴリー 涼宮ハルヒシリーズ


カテゴリ 読書感想文
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