ヒットの仕掛け

【ヒットの“共犯者”に聞く】涼宮ハルヒの場合 I
日経BPの記事です。例によって切り口がひと味違います。「I」とあるように、まだ続きます。最低5回は続きます。


まず一般論を。
こういう記事が読みたかった。
これがマスメディアの仕事だと思う。
感想やら見たままの事実を書くことも大事です。しかし、少なくともこの話についてはそう言う情報はすでにあふれているんです。俺だって「『涼宮ハルヒの憂鬱』その危険な世界観」なんていう記事をあげているくらいだし。しかし、今回の記事は、企業からある程度信頼されているメディアにしか書けないと思います。
日経BP褒めすぎ!と感じる読者もいるかもしれないですけれど、俺が触れているメディアでは日経BPってぬきんでていると思うんですよね。主に俺が興味ある分野では。追随者がいない。


前にも何度か書いていますが、この作品がヒットしたのは作品自体がすばらしいというのが一番の理由です。虚構世界に読者を引きずりこむ手法が、小説では非常に優れていたし、アニメではさらにそれを超えていた。視聴者や読者が熱中するのは無理はないです。


自分の経験が全ての人に共通する普遍的な物とは思わないのですが、今回のインタビュー記事で「なるほどな」と思ったところがありました。

野崎 『ハルヒ』は、映像化されたライトノベル作品としては、出版点数(巻数)は決して多い方じゃないんです(注:10巻を超えるシリーズはざら)。なのに、この部数の積み方は、長くこの仕事をやっている立場としても相当すごいなと思いますよ。

この10巻を超えていなかったというのが大きなポイントだと思うんです。
俺はネットで話題になっていて、さらに某所でアニメを見て、原作が小説であることを知り「面白そうだから読んでみよう」と思ったわけです。で、原作の情報をネットで見たら、数冊のシリーズ物であることを知った。
「これなら全部読んでもすぐに読み終わるな」
と思ったんですよ。
同様に小説原作でアニメ化された「灼眼のシャナ」。アニメ見る限りハルヒほどではないけれどそれなりに面白そうだとは思いました。ところが、既刊の点数が多い。なかなか手を出しづらいです。
極端な例をあげましょうか?
例えば、ある日それまで自分が知らなかった「グインサーガ」という小説がアニメ化されたとします。それが評判になり面白そうだと思ったら手を出すか?。俺は手を出せないです。100巻以上ある小説を一から読もうとは思わないです。
ハルヒのヒットの理由として、シリーズ既刊がまだそれほど多くなかったことも挙げられると考えています。「話題になっているからちょっと読んでみるか」と思った読者が気軽に読み始められる分量だったんですよ。


次に、

「全巻まとめ買い」がほとんど

というところ。これは次回以降のインタビュー記事ででてきそうですが、アニメの功績だと思います。具体的には某漫画でもネタにされた時系列シャッフルです。ビジネス的に狙ったのか、作品の世界観を示す効果のために狙ったのか、今考えると微妙ですね。両方の効果がありますから。
そのあたりの事情が読みたいなぁ。もちろん、全て正直に語ってくれるなんてことは期待していませんけどね(笑)


最後に、インタビュアーの言葉に激しく同意。

−− ところが、アニメが始まってみたら、第1話で度肝を抜かれたというのもあるんですけれど、2話、3話と見るに従って、「あれ、こんな面白い話だったっけ」と思い直しまして。さっき申し上げたように近所の本屋さんで、自腹で全巻買わせていただきました。何かいっぺんに読むともったいないので、毎日1冊ずつ買ったりして。

この感覚わかる。俺は毎日1冊じゃなくて毎週1冊でしたけど。気に入った物って咀嚼しながら読みたいと思うんですよ。「このインタビュアーは、俺と一緒で本を読むのが好きなんだな」と思いました。勝手な思いこみですけどね。


日経BPのメールサービスに大量に登録しているもんで、メールボックスが「From:XXX@YYY.nikkeibp.co.jp」のメールで埋め尽くされている感があります。しかし、日記のネタにはしない物でも、こういう読みたくなる記事が毎日1つや2つ必ずあるんですよ。そういえば、今日は日経ビジネスの宅配日だった。ネタはあるかなぁ。


追記:紹介した記事を企画した方からWeb拍手でコメントをいただきました。あれはIPとれるわけでもなく、ネットでのなりすましはよくある話で、万一なりすました人からのコメントだと迷惑をかけるので公表は避けます。他意はありません。いろいろいらん経験があるので臆病なだけです(笑)。
日経BP様が提供してくださる記事は、かつてよくランチや飲みで話題にしておりました。この場を借りてお礼いたします。*1
涼宮ハルヒシリーズ」も、いわゆるオタクだけでなく、半オタ、非オタが読んで十分楽しめる作品なので、こういう意外なメディア(失礼!)から情報を発信するといままでリーチできなかった顧客層に到達できるかもしれませんね。私は角川書店様とも無関係ですが本好きとして嬉しい限りです。

*1:サラリーマンモードになっている…