NHKスペシャル 東京スカイツリー

いろいろ言いたい事はありますよ。ナレーションにはいろいろ言いたい。
でも、それを考えに入れても、面白い番組でした。




メタルカラーの時代などを読むと、あのタワーには超絶技術が秘められているんだろうなぁとは容易に想像できますが、あの、後から伸ばした鉄塔、ゲイン塔って言うんですね、の部分でそんな苦労があったとは……。
電車の中から見ているだけだと、ふと目を離すと順調に成長しているくらいにしか思わなかったんですけどね。最後の最後までうまくできるのか、現場はやはり心配だったんですね。あれだけのものを作る以上、想定外のできごとが一つくらい無いと逆に不安みたいな感覚はあの業界でもあるんでしょうかね?
あと、興味深かったのは基礎ですね。50メートルってのは意外と浅いなと思ったのですが人間が作る程度の構造物なら十分支えきれるのでしょうか?
ちょっと違う話ですが関東平野の地質構造を思い出し、調べてみたのですが、建築の基礎の話とは全く関係なさそうなのでリンクはやめておきます。いたずらに不安を煽りかねないしね。*1




そして、この物語には期せずして最後に山場が来てしまいました。
東北地方太平洋沖地震


そうですよね。あの地震の時も作業をしていたんですよね。作業をしていた上部では雪がちらついていた、というのには驚かされました。
冒頭の「前でも後でもなく最悪のタイミングで起こった」という言葉が印象的でした。せいぜい数日、おそらくは数ヶ月というスパンで「最悪」だったのかと思いながら見ていたのですが、数時間、あるいは数分というレベルで最悪だったとは……。しかし、幸運なのかセーフティマージンの範囲内だったのか、最悪のタイミングで起きたにも関わらず最悪の事態にはならなかったんですよねぇ。
作りかけの状態だったのに、あの規模の、おそらく千年とか万年に1度しか起こらないだろう地震にこのタワーは耐えました。もちろん、地震によって異なる要素はたくさんあるので、これなら絶対大丈夫などという軽々しい事は言えませんがね。
地震の直後、最上部にいた人たちはちょっと下の第2展望台予定地に避難してきましたが、すぐにまた持ち場に戻っちゃった。それは作業を進めて「最悪のタイミング」から脱出するという判断からです。この番組では、その判断が現場で作業をする人の意見を尊重した結果だったと描かれていました。失礼ではありますが、何らかの配慮があってそういう場面を編集で盛り込んだのかなとも思うのですが、実際にそういうことがあってもおかしくはないなと思えるんですよねぇ。たぶん、ああいう極限状態の事をやっている現場では、働いている人が「使われている」っていう感覚じゃなくて誇りを持っていると思う。それぞれが「自分にしかできない仕事」だと思って作業をしていると思う。


塔の高さが634メートルに到達した瞬間、現場の、なんとなく醒めた雰囲気がとても印象的でした。到達したこと=ゴールではないという思いも強かったと思いますが、もしかすると、仕事として当たり前の事を当たり前にこなした結果だという思いもあったのかもしれません。地震でちょっと遅くなったのが悔しいという思いもあったかもしれない。そうですよね。あの大地震の1週間後に到達したんですから。地震がなければあと何日かは早かったでしょうね。そうだとしたら、派手な式典とかもあったのかもしれないけれど、現場はやはり淡々としていたのかもしれないなぁ。


塔としては世界一ですが、建造物としては世界一ではありません。しかし、他の建造物を見ると地震のリスクが比較的低い所にできています。地震への備えが必要な場所の、それも、決して巨大構造物の構築に適しているとは言えない東京下町に作られた東京スカイツリー
今までは「作り出せば早いな。金さえかければどんな構築物もさくっとできるんだな。」などと思ってみていたんですが、この番組を見て、いやー、やっぱさくっと作るなぁとおもっちゃうだろうな。もちろん、さくっとできるように見える裏側には超絶技術や超絶職人技があるということは理解しながらね。



*1:興味ある人だけ踏んで下さい。関東平野の基盤深度と強振動の関連