読書感想文 太宰治著『走れメロス』

と、表題を書いては見た物の、未だ感想を書くのを躊躇しています。




王に憤りを感じた青年が友を人質にして故郷まで往復をする話なんですよね。再読してみたけれどやっぱりそう言う話なんですよね。それ以上の何かを感じ取る事は私にはできませんでした。
本筋の中で隠し味的に効いてきている所というと、メロスが山賊に襲われるくだりでしょうか。ここでメロスは王を疑っている。疑われてもしようがないけれど疑っている。そしてその疑いは当たっているかも知れないけれど疑っている。
都と故郷とを行き来する過程で、何度かメロスはダークサイドに落ちそうになっていますけれど、その目立たない一カ所がここなのかなと思いました。
もう1点は結末です。
この作品はここで終わりですが、この結末から、もしかするとマントを差し出した少女とメロスとの間にこの後ロマンスが展開されるのかも知れませんね。むろんそれはこの物語では描かれていない別の話です。しかし、友と抱き合ってよかったよかった大団円という終わり方よりも、このような余韻を残す結末の方が心地よい読後感が得られます。私の場合、ですけれど。


もっともっと深読みをするといろいろ出てくる小説なのかも知れませんが、私には背後にうごめく何かを見つける事が出来なかった。たとえば句読点を多用した文体がいったいどういう効果をもたらしているのか、とか、王の今後とか、いろいろ思う所はあるのですが、この話はこの話できれいに終わっている話なのでなかなか想像を膨らませる事が出来ないのですよ。




今期唯一の需要がありそうな読書感想文になりそうなんですが、この内容では需要に応えられそうもないですよね。子供の頃、この小説で読書感想文を書かされた記憶はあるのですが、いったいどんな感想を書いたのか全く思い出せないです。子供の頃の方が感受性豊かだっただろうから、今の自分が読んだらビックリするような感想を書けていたのかも知れないですねぇ。