環状線とターミナル

日本の鉄道、特に国が旗を振って作った旧鉄道省国鉄→JRの路線を見ると、大都市の駅が特徴的です。他の大都市に見られる頭端式のターミナルが非常に少ない。というか、現状では皆無と言っても過言ではありません。




中でも印象深いのは大阪ですね。線路をぐにゃりと曲げて都心部に近づけてはいる物の、京都方面から神戸方面にスルーできるように作られました。おそらく当時でも諸外国の例にならっていれば、もう少し都心部に線路を延ばし、大阪をスルーする需要、おそらく当時としては貨物輸送に限られていたと思われますが、は別線で対応するのが妥当だったのでは無かろうかと思われます。それを敢えてスルーできる形で作ったというのは、様々な事情があったのかも知れませんが、その後100年単位で使われる都市インフラとしては先見の明があったのでしょう。
対して東の大都市東京の事情は若干異なります。東京駅、あるいは新橋駅と上野駅という南と北の頭端式ターミナルが存在し、それを繋ぐ路線を古くからの住宅地である神田を貫いてまで作っています。
Wikipediaを見ると、大阪駅の開業は、東京の縦貫線にある神田駅よりもずっと古いです。大阪駅の使い勝手を鑑みて、東京もスルー可能な形でターミナルを設けた方が得策、という判断があったのかも知れません。


東京と大阪、日本における東と西の巨大都市には鉄道的な見地でもう一つ非常に似ている所があります。それは環状線の存在です。
鉄道好きの皆さんは重々承知のことと思いますが、それぞれの環状線、山手線と大阪環状線は、来歴も違うし運転形態も違います。なので一緒くたに語る事はできないのですが、21世紀の現在では持っている役割は似ている部分があります。
それは、環状線の各駅それぞれがターミナルとして機能しているという事です。
大阪の実態を知らないのですが、乗降人数をみると、大阪環状線に接続し、そこから都心部に路線を延ばす私鉄であっても、環状線の駅から都心部へと徐々に徐々に人が降りていく様に思われます。それに対して、東京では山手線の駅、特徴的なのは新宿、池袋、渋谷ですね、が私鉄の終点となっていたため、その傾向は弱いです。しかし、その後構築された地下鉄網の発展に伴って、若干ではありますが大阪と同じような傾向が見られるようになっています。これも私自身が環状線の大ターミナルを利用しているわけではないので推測でしかないですが……


東京大阪以外の都市を見ても、日本には大きな頭端式ターミナルが見あたりません。強いて言えば、青森、函館、高松等の港を背景としたターミナルくらいでしょうか?それだって、船を含めればむしろスルー可能な構造にしているという言い方も出来ます。頭端式ではないけれど頭端式に近い使われ方をしているのは在来線の新潟ですね。でも今は流れ変わっているのかなぁ。


それに対して、大都市の私鉄はその造られた来歴からなのか、ほとんどが頭端式のターミナルを持っています。大阪の各私鉄は言うに及ばず、東京の私鉄もです。しかし、東京では東の方、つまり東武と京成はむしろ頭端式ターミナルではなく、その前の駅がターミナルとして機能しているのが面白い所です。日暮里と北千住、押上です。特に京成の場合は上野という強烈なターミナルを終点としているにもかかわらず、大ターミナルであるが故の乗換の不便さからか日暮里が実質ターミナルとして機能しているのは面白いですねぇ。


東北縦貫線が完成すれば、中距離電車の基地になっている東京駅と上野駅もその頭端式ターミナルとしての機能は無くなりはしないけれど薄れていくでしょう。日本におけるターミナルの雰囲気は私鉄でしか味わえない物になるのかも知れませんね。




と書き進めてきましたが、実際には現代日本のJRにも巨大な頭端式ターミナル駅は存在しています。それは新幹線の東京駅。
形の上ではスルー可能に見えるけれど線路がつながっていない。線路はちょろっと工事をすればつながるけれど電気的につなげるのが難しいという……。東海道新幹線は60Hz、東北上越北陸新幹線は東京エリアでは50Hz。つなげるにはデッドセクションが必要となりますから。
でも、北陸新幹線にはすでにデッドセクションがあるわけで、東海道リニア新幹線が本当にできて東海道新幹線の輸送力に工事が出来る程度の余裕ができれば、そのあたり工夫する事になるのかも知れません。運営する会社が違うから東北縦貫線のように車両基地の融通などは難しいとは思いますけれどね。