人口密度と気候・地形と鉄道という交通システム

続けざまに書いたダイヤ改正ネタもそうですが、昨今報道されているような海外の鉄道インフラにも絡めた話です。
日本、特に東京、大阪、名古屋と言った大都市圏内では人の移動手段としては鉄道が第一選択肢になっています。
また都市間移動も日本においては新幹線が重要な地位を占めています。
実際にそこに暮らしたわけではないので伝聞と想像でしかありませんが、ヨーロッパでもロンドン・パリ・ベルリンと言った巨大都市では鉄道網が整備されていて、自動車社会であるアメリカでもニューヨークには世界一の地下鉄網が張り巡らされていて、シカゴには一度は見に行きたい高架鉄道が走っています。
これからの鉄道産業の浮沈を握るのはアジアでしょう。日本中国をはじめとして各国の支援により鉄道の整備が進んでいきます。


しかし、一般的には鉄道は、こと人の輸送ではすでに主役の地位を他の手段に譲っているという見方もできます。日本においてもいわゆるローカル線は廃止の噂が絶えませんし、都市内であっても経営は厳しく、公益のために維持しているという後ろ向きの話を耳にします。
果たして鉄道には未来はあるのでしょうか?




私は鉄道の未来はあるが限定的だと考えています。
一つの道は上では言及していない長距離大量貨物輸送機関としての道、もう一つの道は人口密度が高い地域での都市内・都市間移動手段としての道です。
データを取るのは非常にやっかいですがある程度以上の人口密度を越えると、都市内移動手段として鉄道が最も効率的になると考えています。データがとりづらい理由は、都市というのは決して画一的ではなくそれぞれ特徴を持っているからです。人口密度を計算するにしても、その都市の領域や公園等の多さ、都心部への集中度、郊外の広がりなど複数の要素があり、それはたとえば日本国内の東京と大阪を比較するだけでも異なっています。同じ尺度で比較することは不可能と考えています。
都市の人口が何人になったから、人口密度がある閾値を越えたから、ということはできません。
かつての東京は路面電車を撤去し莫大な資金を投下して地下鉄網を築き上げました。ノスタルジーは感じますが、路面電車の輸送力では人の移動を支えきれないというのが実態だったでしょう。
絶対的な人の数と移動距離との兼ね合いで高速大量輸送機関である鉄道が最適なインフラである場所は確実に存在します。


アジアという地域は絶対的な人口が多く、人口密度が高いです。鉄道が最適解になる箇所が他の地域よりも多くなるということは容易に想像できます。そして、その地域はこれからの発展が見込める地域でもあります。かつての東京が通った道をアジアの大都市が通ります。もちろん上で言及したように都市ごとの特性があり東京のやり方を踏襲し、改善しという手法でうまくいくとは限りませんしそのやり方では失敗する可能性の方が高いと思っていますが、方向性としては都市内交通、大都市間交通は鉄道へと向かって行くでしょう。


もう一つのファクターは気候と地形です。よく言われるように日本の地形は勾配と急曲線に弱い鉄道には向いていません。非常に残念なことではありますが、モータリゼーションが進んだ現代では役割を終えてしまった路線もたくさんあるでしょう。しかしもう一つのファクターである気候を無視してはいけません。数々の問題をはらみ、起こしてはいますが、北海道内での人の移動では鉄道が重要な地位を占めています。その理由の一つとして冬の気候の厳しさがあります。鉄道も寒さや雪には弱いです。しかし、相対的には強い。他の輸送手段に比較すれば強い。だから未だに安定した移動手段として選択されているのです。
基本的には気候が厳しいところは人口密度が低いです。しかし、そういうところに都市ができることもあります。気候がいい都市では鉄道が不要な規模であっても、気候が厳しければ鉄道が最も効率的な移動手段として建設されるということは当然あることです。


ダイヤ改正のニュースにしても、海外での鉄道インフラ建設にまつわる報道にしても、そういうことを考えながら読んでみるとまた違う意味合いを感じることができます。