鉄道ピクトリアル No946 【特集】小田急電鉄複々線化完成

本屋が好きな鉄道オタクです。神保町の某聖地に巣くう危ない人の一人です。聖地ではなくても本屋で鉄道関係の本を眺めることも多いです。
大げさではなくここ何十年も眺めるだけで満足していたのですが、「これは買わざるを得ない」という衝動に駆られて購入しました。

空気や時代を読まない特集を組むことで知られる鉄道ピクトリアルがこのタイミングで渾身の特集。おそらく準備には何年もかかっているんだろうと想像できます。
内容をぱらぱらめくってこれはもうだめだと。買っておかないと一生後悔するかもしれないというオタク独特の切迫感に駆られました。
たまんないです。




都電の線路際で生まれ地下鉄千代田線ができるのを眺めその後常磐線沿線に住む私にとって、小田急は身近で遠い存在でした。
遠距離通勤で日常的に使っていた時代もあります。それでも身近で遠いという感想がなくなることはありませんでした。
千代田線が大手町行きから霞ヶ関行きになり、その後しばらく代々木公園行きの時代を越えてから代々木上原行き主体になりました。
学生時代は準急本厚木行きが学校に通う時刻の目安になっていた時代もありました。
本厚木というのはすごく遠くて、日帰りはできるけれどそれでもすごく遠いところでした。まさかその先まで通勤で通うことになるとは思わなかったです(笑)。
しかし、ほとんどの列車は代々木上原止まり。それが当たり前の時代が長く長く続きました。
複々線化は揉めてなかなか進捗しない。もし複々線になったらどうなるのか。時折妄想するのは当然のことです。


それがようやく現実になりました。
自分の妄想とは違い、常磐線千代田線からは成城学園前行き、向ヶ丘遊園行きという比較的短距離の乗り入れ列車が頻繁に走り、夜ラッシュでは伊勢原行きが走るようになりました。
本厚木を越えて乗り入れることになるとは思わなかったですし、大義名分だった多摩線直通をほぼ全廃するとも思いませんでした。全廃ではなく平日に1本残しているあたりが大義名分を気にしているのかなと勝手に思ってますが単なる入庫の都合かもしれません。
正直、そんな表面的なところは雑誌を買わなくてもいいんです。どうしても買いたいと思わせるのは、資料としての価値があると思わせる記事があるからです。
別にピクトリアルでなくても書いてはあることなんでしょうが、記事の中で感銘したところを2点挙げておきます。




1.「小田原急行」の執念
小田急は「小田原急行」の略称です。小田原急行です。小田原まで急行するんです。
しかし、新幹線では東京駅から小田原駅まで40分くらいで「急行」できます。設備が違いすぎる小田急には東京都内ターミナル駅から小田原というルート設定で太刀打ちはできません。
複々線化をすることにスピードアップが可能になったとはいえ、ロマンスカーのスピードアップより近距離輸送の改善に重きを置くと思いましたが、ついに悲願である60分切りのダイヤを引きました。新宿から小田原というピンポイントのルートでは新幹線よりも速いこととなり、さらに箱根観光に行くのなら乗り換えなどを考えれば圧倒的に小田急優位でしょう。
しかし仮に今後増発するとしても1日に数本です。集客にインパクトがあるとは思えません。
これは「小田原急行」としての執念なんでしょうか。
2.複々線の形は綾瀬車両基地が決めた
いやぁ…。そうつながってたのか。なるほど…。
都市計画では千代田線は世田谷通りのあたりを通って喜多見のあたりで小田急に合流することになっていましたが、その後代々木上原に接続場所が改められました。
単純に工費の問題なのかと思っていましたが、現在小田急車両基地になった喜多見の野川沿いは当時の営団地下鉄車両基地を計画していて、その車両基地に自社線だけでアクセスすることを狙っていたと。しかしその後、明治神宮前代々木公園間の電留線、および綾瀬の車両基地が建設できるめどが立ち喜多見の用地は小田急が使うことになり代々木上原接続に変わったと。
それは妄想でも想像していない展開でした。
都市部の新路線は車両基地をどこにどう作るかっていうのが建設のためのハードルになっているんだなぁと。
小田急には関係ないですが、つくばエクスプレスも守谷のあそこという絶妙の場所に車両基地が作れたから建設できたのかも。今話題の豊住新線は短いから車両基地はいらないでしょうが、松戸市が騒いでるように半蔵門線を延伸することになったりした場合はなんらかの手当が必要になるでしょうね。つくばエクスプレスから湾岸に伸ばす謎計画も湾岸エリアに小規模でも車両基地が必要なんだろうなぁ。




ほかにもいろいろと読み込みがいがある記事があり買ってよかったとつくづく思いました。