物語の先読みは邪道だ!

本格だろうが社会派だろうがトラベルだろうが推理小説を読むのが好きです。いや、最近はあまり読んでいないから好きでしたといった方がいいか。
私の読書体験は推理小説が元になっています。家族が社会派推理を好んでいたので家にたくさん本が在庫していて自然に読み始めました。そんな経歴を持っているので、推理ではない普通の小説というのになかなかなじめなかったですね。
理由は簡単で、推理小説以外の小説はなぜ物語が終わるのか理解できなかったんですよ。推理小説の場合は犯人が捕まって、トリックの謎が明かされてその話は終わり。探偵役は次作でまた活躍することが多いじゃないですか。そのシステムで「物語」を理解してしまったので、それ以外の仕組みがあるというのが理解できなかった。たまに推理物でも予想外の終わり方をする物がありますが(麻耶雄嵩氏の著作などはそんな感じ)それはそれで今は受け入れることができるけれど、当時読んでいたら「なんじゃこりゃ」と思ったんじゃないですかね。
普通の小説を読む(読める)ようになったのは割と遅くて、たぶん高校1年か2年の頃だったと思います。なにも好きこのんで推理小説を離れたわけではなく、読んだことがない本がだんだん少なくなってきて守備範囲が広がったって感じでした。
推理以外のジャンルの本を読むようになって初めて物語の切なさを知ったんだろうな。となると、その原体験は五木寛之氏か新井素子氏の小説あたりになりそうです。それと並行して島田荘司氏の大トリック物も楽しんでました。
その後、新本格推理という分野が台頭してきてかなり楽しめました。一番好きなのは綾辻行人氏の「時計館の殺人」ですね。あれはすばらしい小説だ。森博嗣氏の「すべてがFになる」は、ある一点を除くと本当にすばらしいと思います。ある一点がどうしても気になってしまって…メイントリックよりそっちの方が印象に残ってしまった(笑)。推理小説ヲタはこれだから困る。


私は推理小説読むときでも犯人当てとかトリックを文章から読み取り当てるとかいうことには全く興味を持ってませんでした。今でも持っていません。むしろ、作中でいかにして華麗にトリックを見破るか、いかなる裏設定があってそれが犯人を捕まえるのにつながっているかを楽しんでいます。時々、メイントリックの予想がついてしまう作品はありますが、まぁそれでも解き方が面白ければ十分楽しめます。
このサイトに書いていることと矛盾していますが、読者は作者が呈示する物語を受け止めればそれで十分なんじゃないかと思っています。だからね、漫画だろうがなんだろうが、ここに書いているような先読みは邪道だと自分では思っているんですよ。無の境地で作品を受け入れるのが一番正しい読み方だと今でも思っています。


こうやって公開の場で偉そうなことを書いていると、自分では「そうじゃない」という意識を常に持つようにしていても、読んだ人が「なるほどそう言うふうにこの本は読むものなのか」と思ってしまうかもしれないので怖いですね。
このサイトを第三者的に見ると、まるで、物語はこうやって先読みして楽しむ物だ!と主張しているように見えるんですがそれは違います。一部の作品についてだけ、書いている本人が「これは邪道」と見切っている読み方をしていて、それをゲーム的に公開しているというのが正解です。




でもね、予想して、それが当たるとほんっとにうれしいですよ(笑)。とくに突拍子もないアイディアが当たったときにはね。公開しておいて良かったなぁと、読書の裏街道に足を踏み入れてよかったなぁと思いますよ。ほんと。


印象深い推理小説

点と線 (新潮文庫)

点と線 (新潮文庫)

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

時計館の殺人 (講談社文庫)

時計館の殺人 (講談社文庫)

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社ノベルス)

すべてがFになる (講談社ノベルス)

物語に初めて触れた時代の印象に残る作品
…絶句〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

…絶句〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

…絶句〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

…絶句〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

戒厳令の夜 上

戒厳令の夜 上

戒厳令の夜 下 (新潮文庫 い 15-10)

戒厳令の夜 下 (新潮文庫 い 15-10)




人気ブログランキング