全く違う作品から共通点を見いだす快感
『邪魅の雫』を読んで「『ハヤテのごとく!』とよく似た話だなぁ」と思う人は俺以外にいるのだろうか??そんな疑問を持つ今日この頃です。98話を読んで、さらにその思いを強くしました。
見てくれは全然違います。
片や
片や
- 現代の日本
- 萌え
- パロディ
- 超人執事
- 大金持ち
- 完全無欠美少女
どうみても共通点がありません。本当に(ry
でもね、俺からは、畑健二郎さんはもしかしたら京極夏彦作品を愛読しているのではないか、逆に京極夏彦氏は『ハヤテのごとく!』にインスパイアされて『邪魅の雫』を書いたんではないかとさえみえるんですよ。
2006/9/30の感想文で「ネタバレ」と書いておきながら実はネタバレにならない思わせぶりなことを書き、全然違うところでわからないようにこっそりネタバレしたりしたんですけど、今日これを書くとなるとネタバレ避けられないな…たぶん。せいぜい原典を読みたくなるような記述を心がけるようにします。出版社もチェックしているみたいだし…。その代わり他の作品を引き合いに出しちゃう…。
京極堂シリーズ第一作からおおよそ共通しているモチーフとして、「見える物が真実ではない」というのがあります。ある人からの視点が他の人からの視点とずれているというのが謎を作っています。視点というと誤解を招きそうなので、視点+価値観と言った方がよいかもしれません。ある作品で榎木津礼二郎をだました話なんてまさにそうですよ。他人から見たら「そう言う風に見える」って事じゃないですか。
『ハヤテのごとく!』の最初の誤解はそれじゃないですか。少年にとっては「犯罪者の言葉」なのに、少女にとっては「愛の告白」になっている。他にもたくさんあります。同じ出来事であっても人によってそれぞれとらえ方が違うことを表現している。『ハヤテのごとく!』が京極夏彦作品と違うところ、それを謎にしないこと。広い意味での伏線にしている。そして、その伏線の持つ意味まで読者に知らせていることです。
『邪魅の雫』に至ってはもっと強烈。この小説では、うー…やっぱり推理小説好きとしてはこれ以上かけないか…うー…。。。。
めちゃ悩ましいですよ。謎の根幹部分に触れなきゃいかんから。うまい書き方は無い物か…
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すいません。できる限りわかりづらくかつわかりやすく書きます。なにがなにやらわかりませんね(笑)
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『邪魅の雫』は一つの物語ではないんです。これでわかってもらえるかな?
『ハヤテのごとく!』で今週ヒナギクさんの物語が終わったように、『邪魅の雫』でも物語が途中で終わるんです。
しかしここにも二つの作品の間に大きな違いがある。『ハヤテのごとく!』では、それを読者にはっきりと印象づける、それに対して『邪魅の雫』ではそれ自体がまた一つの謎になる。そういうことです。
さらにいうと、この二つの作品は両方とも「登場人物が持つ情報量の差」を物語に利用しています。まぁ推理小説だとそれはもう当たり前のことで、だいたい真実をつかんでしまった探偵以外の人は探偵にそれを告げる直前にお亡くなりになるのがお約束です。で、困ったことにその真実は読者には伝わりません。
しかしここにも大きな違いがある。読者がその情報を知っているのかいないのかです。『ハヤテのごとく!』という作品は、俺が今まで読んだ中では、読者に与えている情報が突出して多い。バックステージやらコミックスで作者が語っているってだけでなく、本編中で心理描写のために描かれる登場人物の独白も「情報」になります。絵で表情を描くだけにして読者が想像を膨らませることに期待したり、パロディネタを投下してもいい場面でも言葉で伝えています。
『邪魅の雫』はほどよい情報提供を読者にしている。推理小説でアンフェアといわれるような状況にもならず、かといって誰もが先を読めてしまうというほどでもない。
こういう言い方するのはあれですが、読者への情報提供という要素を『ハヤテのごとく!』と比較するのはどんな作品でも酷だと思います。追随しようとしても失敗するリスクが高すぎるし、自分が構築した物語に自信と愛着が無ければできないと思います。これをやっても破綻しないってのが『ハヤテのごとく!』が他の物語と根本的に違うところなのかも。でも、仮にそうだとしてもそれがどうしてなのかはまだわからない。
もしかすると昨日書いた
人を切り取って物語作るってよりも、時間を切り取って物語を作ろうとしている
というのが正解かもしれないけれどもう少し考える余地あり。時間を切り取って物語を作る試みは過去にいくつもあったけれど、読んだ限りではどれも難解だった。実は「漫画」を使えば、その主要読者である子供にもわかるような物語を作ることができたってことか。
それだけじゃなさそうに思えるけど一つのアイディアではあるな…。
『ハヤテのごとく!』と『邪魅の雫』は、その処理の仕方が違うだけで構造は本当によく似ているんです。まるで互いを互いに意識しているかのように見えます。見た目が全然違うから気づかない人もいると思うし、そもそもこの二つを同列に読んでいる人は少ないと思うけれど、これはかなり自信あります。
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