芥川竜之介著『偸盗』魔性の女

おもしろかったです。この本の中では一番好きな話。
羅生門』の雰囲気がする京の街に巣くう、すさんだ連中をえがいた、せつなくやるせないはずなのになぜか爽快な読後感が得られました。
ヒロインの一人沙金は男を手玉に取る悪女、それに振り回される主人公の兄弟と周りの男ども、そこから常に一歩引いたところにいて自分の世界に閉じこもっている阿濃、盗賊をまとめる老人二人。みんな魅力的だよなぁ。
ラストでは登場人物のうち数人がそれぞれの幸せを手に入れた事を示唆しています。作中世界を振り回した沙金にとっての幸せな日々は訪れるのでしょうか?


過去の名作は読んでいる人が多いのでネタバレしてもかまわないと思いつつ感想を書いているんですが、この話はネタバレしない方がいいような気がします。
生々しいんですよね。生理的に嫌悪感を抱く人がいるかもしれない。冒頭からかなりきつい描写があります。荒廃した街の据えた匂いが漂ってくるかのようです。しかし、前にも書いた妙にすがすがしい読後感というのは、その荒廃した空気があるから得られるような気がします。


私はキャラ萌えできないのですが、もしかしたら沙金に萌えながら読める人もいるのかもしれない。現実世界ではお近づきになりたくはないですが、物語の世界の中ではこういう女性は男目線からは魅力的ですね。女の子から見るとどうなんでしょうかね。


青空文庫 偸盗

羅生門・鼻・芋粥・偸盗 (岩波文庫)

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カテゴリ 読書感想文
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