新井素子著『…‥絶句』この小説はすでに私の一部である。
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感想記事暫定版
2007/2/15 読書感想文 新井素子著『…‥絶句』暫定版 悪いこといわないから読んでみろって。
約20年ぶりの再読でした。とにかく、もう、とにかく衝撃を受けた。
まさに絶句!
このサイトに書いている文章の多くがこの一冊の小説から影響を受けています。筒井康隆作品に影響を受けているという話は前にも何度も書いているし、自分でも認識していましたが、この作品は違う。すでにその影響が自分自身の潜在意識になってしまっている。あたかも自分自身の考え方のように思ってしまっている。しかし、それはこの小説の影響による物です。参りました。
例えば自然環境保護に関する考え方。
例えばハルヒの感想
そしてハヤテの感想。
絶句下巻の後書きパート2が具現化した物がハヤテ。それを一つにまとめて時間とトゥルーエンドという概念を足した物が『ハヤテのごとく!』というだと考えてもあまり遠くはない。
ものすごい衝撃です。一番怖かったのはこの小説から得た考え方を自分の考え方であるかのように誤認していたことです。この小説を読まなければ今の自分は違う人間になっていた。
人は一生に何度かそういう経験をするでしょう。そしてそれはたいていの場合深く心に刻み込まれ忘れることはないでしょう。しかし、私はこの小説に強烈な影響を受けたことをすっかり忘れていた。この小説はすでに自分自身になっています。これは恐ろしいこと。この小説はまだ10代だった私を壊して再構築したんだろうなと思います。
話の本筋からはそれますけれど…。昨年話題になった「子猫殺し」ってのがあるじゃないですか。ああでもないこうでもないと。この小説ではね、あれよりもっと強烈な問題が提起されています。作中で呈示されている結論に賛同できない人はいると思います。人間はそんなに偉いのかと。でも…。そうなんですよ…。そういうことなんですよ…。理解できるけれど賛同することはない、それが人間なんですよ。なまじ理解してしまうから始末が悪い。理解しなければ楽なんですよ。理解して抵抗するから苦しいんです。
体裁はもろにライトノベルです。ハルヒシリーズよりも挿絵は多いかも。前回も書いたけれど、挿絵は吾妻ひでおさん。
キャラ萌えってのとは違うだろうけれど、登場人物「新井素子」のそっくりさんの人猫が一番気に入っているかな。
俺が読んだ女性作家の書くお色気シーンってのは高橋留美子作品ではなくてこっちが先でした。いやね。何とも言えぬエロさですよ。極々自然。なのにエロいのかだからエロいのか?
例えばさっき挙げた人猫。猫に変身するわけですよ。で、変身する時、裸になるわけです。服着ていると変身した後面倒だから。めちゃロジカル。なのにエロい。いえ、エロいから好きだってわけじゃないんですけどね、たぶん(笑)。
筒井康隆作品『残像に口紅を』に通じるとっても切ない場面も用意されています。どうにもならないこと。そのどうにもならないことを受け入れなければならないこと。しかし、それはあくまでもサイドストーリー。
もしもこれから新井素子作品を読もうと考えている人がいたら『…‥絶句』から読むことをお薦めします。この作品から初期の作品が多数派生していきます。
なじみやすい文体、可愛い挿絵。なのに特に対象読者である思春期を迎えた少年少女には多大な影響を与える思想が描かれている作品。今出版されている「ライトノベル」というカテゴリにくくられる本の中にも、きっとそういう本はあるはずです。
この小説は残念ながら新品での入手は困難なようです。これは当時ライトノベル的に読まれていた作品の宿命なのでしょうか?『涼宮ハルヒの憂鬱』も将来入手困難になってしまうのだろうか…。そう思うとちょっと寂しい。
もし、『…‥絶句』という小説を、この年になって初めて読んだらどう思ったんだろう?それが想像できないんですよ。今の自分は『…‥絶句』を読んだことがある自分であり、それ以外の自分というのが存在するとは思えないです。
子供向けの気軽に読める小説に見えるでしょう。でも、この作品に強烈な影響を受け、再読して頭を殴られたような衝撃を感じた人間は確かにいる。一人の人間の潜在意識にまで影響を与えた作品なんです。傑作だと思います。他の人にとっては違うかも知れない。少なくとも私にとっては自分を作った数少ない著作物の一つです。傑作です。無条件でお薦めできる。読んで文句を言う人もいるかもしれない。でも読む価値はある。絶対ある。
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