芥川竜之介著 『蜘蛛の糸』 本当は黒い蜘蛛の糸

蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)

青空文庫 蜘蛛の糸


短い小説である。ものの5分もあれば読めてしまう。このような小説の感想文を書くのは本当に難しい。私が書いてしまったら、もしかすると本編の小説より長くなってしまうかも知れない。


この作品は地獄に堕ちた極悪人の「かんだた」と、彼が生前に行ったただ一つの善行を知るお釈迦様の物語である。かんだたは、それがお釈迦様の慈悲とは知らずに遙か極楽から垂らされた細い蜘蛛の糸にすがりつく。しかし、彼は途中で気づいてしまう。その糸に他の悪人どももかんだた同様にすがりついていることを。
そう、みんな地獄から逃れたいのだ。
かんだたは当然のように彼らを一喝する。そして、かんだたは…。また地獄へ堕ちていった。


普通に感想を書くならば、訪れたチャンスを自分の身勝手さでむざむざと失ってしまった極悪人の運命を自分なりに考えて書くことになるのであろう。
しかし今日はあえて視点を変える。


かんだたが蜘蛛の糸にすがりつき、そして落ちていく様を、お釈迦様は一部始終見ていたのだ。そして、事が終わるとぶらぶらと歩き出したのだ。もうかんだたが助かるすべは残されていない。お釈迦様は一度はチャンスを与えた。しかし、二度目はなかった。慈悲と言うより試練という言葉があてはまるようにさえ思える。


そして、もう一つ。
かんだたが、再び地獄へ堕ちて、死ぬこともかなわぬ(既に死んでいるので)責め苦に遭っているその最中、極楽ではのどかな時間が流れている。一人の極悪人の運命など極楽には関係ないのだ。そこはかとない黒さを感じる。


この部分を現代社会に当てはめて書いてみると他の人とは切り口が違う感想文が書けるはずである。しかし、私は書かない。書きたくない。なぜなら、フィクションはあくまでもフィクション。作り話である。その物語の世界の中で楽しむのが一番いい楽しみ方なのではないかと思っている。




関連記事
2007/7/14 読書感想文の書き方 すらすら書ける魔法のことば 小学生・中学生・高校生の夏休み宿題向け
2006/8/4 パクリ 無料 読書感想文(何をどう書くか:読書感想文の書き方)
カテゴリ 読書感想文