ヤマグチノボル著「ゼロの使い魔 13 聖国の世界扉」ラブコメの王道



この小説、本当に面白いです。出版社の宣伝コピーみたいな言い方ですが、「小説の楽しさのすべてが詰まっている」って感じですね。他作品引用になるのでいずれ別記事で書きますが、この小説、決して「すごさ」は感じないんです。作者のヤマグチノボル氏には申し訳ないですが、すべてが王道なんですよ。そして、ほぼすべてが上質です。ライトノベルらしく一読するにはそれほど時間はいりません。しかし、この小説、何度も読み返したくなるんですよ。そして、読み返しても面白いんです。そういう繰り返しの鑑賞に堪えうる作品は世の中にそう多くは生まれていません。傑作です。


13巻の話をしましょう。
巷ではルイズが珍しく常時デレているというのが話題になっていますが、とても悲しいデレですよね。13巻は7巻の裏返しです。7巻、そう、才人が7万の軍勢に単騎立ち向かっていったあの話ですね。あの時、才人は愛する人(ルイズ)を守るため、自分の命をかけました。そう、彼は死を決意していた。それはルイズとは一生会えなくなることを意味しているにもかかわらず、そのルイズの将来ために自分が犠牲になることを選んだのです。13巻では、ルイズはサイトのために、自分が愛するサイトを守るために彼を地球に戻すことを選択します。それは一生サイトと会えなくなることを意味します。たとえもう2度と会えなくなっても自分はサイトのことを一生思い続けることを決意し、その愛する人のために別離を選択します。そんなことはつゆ知らず故郷のことを思いながらも愛する人の笑顔の数を数えている才人は…。
何とも切ないお話です…。


しかし、あえてレベルを落として考えてみましょう。これってラブコメの王道なんですよね。お互い相手のことを思って行動しているのにそれがすれ違ってしまい結局結ばれない。それを繰り返して最終的には大団円を迎えるっていう寸法です。
才人はルイズのため、ルイズはサイトのため、それぞれ自分なりに考えて最善の選択をしているんですよ。自己を犠牲にしても愛する人にとって最もいい結果が出るようにしているんです。なのに…。


ゼロの使い魔」という物語は終わりに近づいてきたと思います。ここで一悶着ありましたが、しばらくの間才人とルイズは行動をともにするんじゃないかと思います。最終的に聖地を奪還し、おそらくはティファニアがかなり重要な役割を担いつつハルケギニアの世界は統一されるんじゃないでしょうか?そこにはまだ出てきていないティファニアの使い魔、口にするのもはばかられるような強力な能力を持っている使い魔も鍵を握っていると思います。胸に印が出ると言うところから、その使い魔は人の心をコントロールする能力を持っているんじゃないかと推測していますが…。今まで出てきた登場人物が使い魔になるのか、新キャラが出てくるのかはわからないですね。


この小説は素晴らしいですが、たぶん日本をはじめとする極東のごく一部の地域以外では受け入れられないと思います。それでも、世界中の人たちに読んでもらいたいとは思いますね。本当に良くできた小説です。