コミックス14巻感想 ナギ?なんで泣いているの?
- 作者: 畑健二郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/01/12
- メディア: コミック
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もし仮にそれほど漫画に興味を持っていない友だちが「おまえハヤテのごとく!って漫画の感想サイトやっているんでしょ?どういう漫画なの?」と聞かれたら俺はどうするか?言葉で説明するのは大変。かといって「とりあえず最初っから読んでみろ」というのも不親切。そしていちいち解説するのも大変です。
14巻が発売されてやっと簡単に紹介できる方法ができました。
14巻だけを読んでもらってそれだけを説明すればたぶんどういう漫画かわかってもらえます。
- 表紙
14巻のハイライトは表紙です。一見ごく普通の表紙なんですけれどちょっと注意深く見て、いやここは地図を見る時の表現に従って「読んで」と表現した方がいいでしょう、読んでみると、この1枚の絵にどういう意図があるのかを考えたくなってしまいます。
ナギとハルさん。ハルさんは人気が出たから出てくることに意外感はないです。彼女とヒロインの一人がメインで描かれることにも違和感はありません。後ろで生徒会3人娘とヒナギクさんが遊んでいるのにも全く問題はない。
おかしいのはただ1点。
ナギが泣いていることです。
そこに気づいてしまうと、この1枚の絵から物語が生まれるんですよね。
そもそもこれはいつの話なのか?何でこのメンバーが一緒にいるのか?ナギとハルさんはいつどこでこういう関係を築き上げたのか?
そして、ナギは何で泣いているのか?
ナギが笑顔だったらこの表紙からは何も感じないです。泣いている、ただそれだけのことでこの表紙には何らかの意図が隠されているのではないかと勘ぐってしまいたくなるのです。中扉が過去の物語を表現する場所なら、14巻の表紙は未来の物語を表現しているのではないかと感じました。いずれにしろ背後にある物語を感じてしまった時点で俺は作者に負けています。術中にはまったと言った方がいいでしょうかね。
次回のバックステージで解説があるような気がします。
- 裏表紙
ごめん…。地味すぎてわからない…。
- 帯
750万部突破らしいです。コミックスを買っている友だちと「意外と伸びてないね〜」という話をしました。おじさんたちは感覚がおかしいのでしょうか?(笑)
実際本屋に行っても一時期みたいな在庫払拭状況にはなっていないので、売れ行きに勢いが無くなっている可能性もあります。もしそうならもう1段2段のてこ入れが必要になりますね。
目覚まし時計を全員プレゼントするらしいですがツンデレモードなんですかね…。もらっても使えません。
- 表紙カバー裏
本当にあった怖い話
- 裏表紙カバー裏
本当にあったら怖い話
- 折り返し四コマ
後ろの方の愛歌さんのが面白かった。なるほどねぇ。そういうことですか。それだけじゃないんだろうけれど。
- 中扉
愛歌さんの物語。今はさっぱりわからないけれど…。
- 目次
ここも愛歌さん。ハルさん以上にプッシュされている。この漫画を連載するために人気出さないといけないキャラなのかなぁ。
ここから本編です。
- 1話(141話) それがどんな無茶振りでも男の子には女の子の期待に応える義務がある
咲夜が14才になるお話。咲夜がかわいく描かれているのは当然として…。ちょっと気づいたことがある。
この1話しか読まない人でも誰がなんて言う名前だかわかるようになっている。意図的にやっているような気がするなぁ。親切設計。
- 2話(142話) 正体がバレると動物にされるって設定はよく考えると怖いよね
咲夜の話が続くかとおもいきやハルさんと愛歌さんメイン。「キャローン」が切れてしまったのは残念。
この話の扉絵を見て思ったこと。白皇学院の制服はナギやヒナギクみたいなコンプレックスを持つ女の子にとって優しい仕様なのではないか?
- 3話(143話) 僕たちの行方
ここからがこの漫画らしいところです。一つの話にいくつものストーリーが混ざってきます。ヒナギクさんが扉絵なのに、冒頭は咲夜の誕生日会。ページの途中唐突に西沢さんが出てきて、同時に起こっている別の物語が描かれるという寸法になっています。
ヒナギクさんはハヤテ、ナギ、西沢歩が同じバイト先で働くことになったことをこの時初めて知ったわけです。西沢さんもヒナギクがバイト先と関わっていることをここで初めて知ったんですよね。登場人物と読者との間で情報格差があったけれどそれが是正されました。こういう設定を引っ張らずにすぐに明かすのはこの漫画らしいところです。
何はともあれ、これからしばらくの間読者にはつらい展開になります。俺はもう慣れたけれど初めてハヤテのごとく!を読む人には話の流れが追えないかもしれないです。
てっきりヒナハムの話に流れるかと思ったら咲夜の家族が出てきてもうわけわかりません。
- 4話(144話) 時代劇でも桜吹雪を見れば人はたいてい素直になる
さらに輪をかけて難しくなります。ハヤテの過去話まで出てきています。アータンはこの漫画では数少ない隠された設定の一つですよね。時期が来れば自然に明かされるのでしょうけれど…。
西沢さんはハヤテと同じ立ち位置になりました。ヒナギクの弱点を知り、ナギとヒナギクという一見全然正反対に見える二人が内面的には似ているということをここで知りました。
雪路と西沢さんには過去に因縁があることが示唆されたりしましたが、それだけではなく咲夜の誕生会の話もちょっとだけ描かれています。いろいろ混ざっていてもうわけがわからなくなります。
- 5話(145話) Distance〜近くても
おそらくこの物語の根幹になる話がさらっと語れました。この流れでそれを言われるとなぁ…。そういう漫画だからしょうがないんだけれど…。ヒナハムの話は本編からみるとサイドストーリーですが、それはそれで面白い話ではある。それとエンディングに直結するであろう話を同時に出してくるというのがこの漫画らしいところでしょう。
- 6話(146話) Distance〜遠くても
ヒナギクの告白は週刊連載で読んだ時には引っ張った印象がありましたが、コミックスで読むとそれほど感じないですね。
145話以上にこの話は物語の根幹に触れています。愛歌さんが言った「お金ではどうにもならない事もとても多い」という言葉はこの先ことあることに思い起こされるでしょう。
そして、この話についていうのなら、週刊連載時からの改変箇所に触れないわけにはいかないです。
姫神→OUT
ハヤテ・ナギ→IN
です。
最後の一コマに描かれていた姫神くんは消されました。もしかすると漫画の方ではキャラクターデザインを変えるのかもしれませんし、このタイミングでこの花火を見ているということはあり得ないという設定なのかも知れません。
このコマは「ハヤテ・ナギ」の方がいいですね。この二人もいつかは別々の居場所を見つけるのではないかと予感させます。145話、146話、147話はこの漫画の縮図みたいな印象を持ちました。ストーリー、ギャグ、萌え、それらが複雑に絡み合ってこの漫画はできています。
- 7話(147話) ハヤテむかし話
ね。
重い話しの後にこういうどうでもいい話を持ってくるでしょ。いいよねぇ、このセンスがたまらなくいい。好き嫌いはあるのでしょうけれどね。
こういうぬるい話を巻頭カラーの時にやってくれるのがいいです。せっかくのカラーだから可愛い女の子をたくさん書きたくて、それをやるにはあまり濃い話は書けないと言う事情もあるのかも知れません。
- 8話(148話) 新学期の新しいクラスになったときはなんとも思わなかった子が学期末には可愛く見えてくる不思議
一度「死んだ」キャラがよみがえった話。
- 9話(149話) ハイキングに行きたい。すごい行きたい。ていうか仕事場から出たい
高尾山ハイキングスタート。みんな迷いすぎ。
- 10話(150話) 迷子。迷うから迷子。オレは人生で迷子。たーすーけーてー…
キャラ紹介ですねぇ。アニメから入って最近サンデー読み始めた人にも親切です。
- 11話(151話) ワイルドなライフ動物が許してくれない
冒頭のネタに吹いた。読み返しても面白いネタだ。
JASRACが脈絡無く出てくるけれど、これはたぶん4話(66ページ)にあるだんご三兄弟のやつでしょう。巻末に一発でいいのかな?
- おまけ漫画 マリアさんのホワイトデー
- 後書き
畑健二郎さんという漫画家の資質がよくわかりますよね。設定を使ったサイドストーリーを描くよりも、その世界で何が起こったかを描く方がこの人にとっては簡単なことなんだろうな。俺はどっちもできないわけだが…。
- まとめ
7話までと、8話以降の高尾山ハイキング編の感想に温度差があることがおわかりだと思います。漫画として読むと高尾山ハイキングの方が面白いんですよね。理屈なく笑える物に詳細な解説は必要ない。
そういう話と、かなり濃くて深い物語が絡み合っているのがこの漫画の特徴であり、魅力だと思います。