桂ヒナギクと「属性の喪失」

この時期なぜか特殊な記事を書きたくなります。その理由はなぜかハヤテのごとく!本編がラブコメ展開になるからかもしれません。作者が意識してそうしているのか、たまたまそうなっているだけなのかはわかりませんが、今週に限って言うとアニメまでラブコメ展開になってしまいました。
今年はネタもなかったので特に何かをしようとは思っていなかったのですが、つい9時間ほど前、ふとある考えが浮かんだので書き留めておきます。


桂ヒナギクというキャラクターを気に入っている人はその属性を気に入っているのでしょうか?

  • 美少女
  • 高所恐怖症
  • 生徒会長
  • 剣道部部長
  • プライドが高い
  • 中身は実質男の子
  • 中身は子供っぽい
  • 不幸な生い立ち

というように、彼女には一部は相反する数多くの属性が与えられています。これらの属性が失われた時、彼女の魅力は損なわれてしまうのでしょうか?
まず、生徒会長と剣道部部長。その2つの属性は彼女が高校を卒業した時に失われます。生徒会長についていえば、作者ですら予期していなかった日比野文の登場によってそれが強く示唆されています。また、その属性は彼女自身が努力してつかみ取った物です。ある意味では、彼女にとっての「仮面」と言ってもいい属性だと考えられます。
次に、高所恐怖症・プライドが高い・中身は実質男の子・中身は子供っぽいについてです。これらの属性は作品が進むに連れ自然に解消されてしまうかも知れません。根拠のない予想ではなく私はそう考えています。
そして、最後。妹と不幸な生い立ち。これはもう変えようがありません。どうがんばっても雪路と姉妹であるという事実、子供の頃親に捨てられたという事実は変えようがありません。


先週の165話で、薫先生から見たヒナギク像が呈示されました。子供の頃の、美少女だった頃の雪路を知っている薫先生からみると、ヒナギクもいずれは雪路に近い女性になるとしか思えないんですね。漫画の中ではヒナギクと雪路それぞれが別の属性を持っているようにしか見えないにもかかわらず。




ヒナギクを離れて他のキャラクターの話をしましょう。
まず、西沢歩
彼女はどうみてもやられキャラ、振られ役にしか見えませんでした。ところが116話以降、豹変しました。今でも恋をしていることに代わりはないですが、その中身は一変しています。この漫画をラブコメとして読んだ場合、読者に視点で見れば彼女がライバルたちに比べて遙か先に進んでいることは明らかだったのですが、それを本人も認識してしまいました。彼女は属性を失ったんです。それでも彼女は彼女であり続けるし、引き続き彼女のファンである人もいます。
次に執事についてです。
執事というのはこの漫画の中では例外的にわかりやすい属性になっています。異常な能力を持っている男たち。しかし、今執事をしている男性たちは一生執事でいるのでしょうか?
それはわかりません。
姫神くんみたいにどこかに行ってしまうかも知れないし、野々原楓のように一時的に主の元を離れるかも知れない。
主人公ハヤテはどうなるのか?物語の終わりでもナギの執事で有り続けるのか?執事ではなくパートナーとしてナギの側にいることになるのか?あるいはナギの元を離れ別の道を歩き出すのか?それはわかりません。


この漫画の登場人物で特徴的なのは、三千院ナギを筆頭として現実ではありえない大金持ちのお嬢さまがたくさんでてくることです。では、彼女はずっとお嬢さまで有り続けることができるのでしょうか?
それもわかりません。もしかするとワタルくんの家のように没落することだってあるかも知れません。お嬢さまという属性だって未来永劫続くわけではないのです。


さて、最後に一番わかりやすい例を挙げましょう。
ハヤテのごとく!という漫画に出てくるメイドさんはずっとメイドで有り続けるのでしょうか?今のところ明確なメイドキャラは3人。サキさん、ハルさん、そして、マリアさんです。サキさんはメイドさんといいつつも実際にはワタルくんの母代わり、姉代わりであり、ビデオ屋の店員でもあります。ハルさんはメイドになったきっかけがすでに作中で描かれています。彼女はいつメイドであることをやめてもいい、そんな立場です。そして、マリアさん。作中とコミックス中扉から推測するに、彼女はある時期まで三千院家の跡継ぎとして育てられ、ナギの出現によって彼女のメイドとして生きていくことに「自分で」決めたように思えます。
しかし、ナギは予感している。
いつかマリアさんはメイド服を脱ぎ自分の人生を歩き始めることを…。




ハヤテのごとく!』という漫画がなぜ面白いのかを考える時、登場人物の属性からその理由を探ると袋小路にはまるという経験をしました。なぜなら記号性、あるいは属性がどんどん変わっていく物語だからです。「こういう属性の登場人物がいるから面白い」と思って読んでいると、いつのまにかその属性を持つ登場人物がいなくなっていたりします。それで興味を失うかというとそんなことはない。わけがわからなくなって余計に深みにはまって行きます。


今日は桂ヒナギクの誕生日と言うことですが、これは彼女に限った話ではありません。
ハヤテのごとく!』の登場人物は、彼ら、彼女らが暮らす仮想現実の中で、物語が始まる前から、そして終わった後も、読者の意図とは無関係に属性の獲得と喪失を繰り返しながら日常を生き続けている。そんな風に思えてならないのです。


2007/3/3 ヒナギクの決断が『ハヤテのごとく!』に与える影響は?
そういえば去年のサンデーにはヒナ祭り付録が付いていたんだった…。
2006/3/3 桂ヒナギクのポジション
読み返すともどかしいです。けれど今日書いたのだって2年後に読み返すともどかしく見えるのかも知れません。
2008/2/27 165話感想 仮想現実を紡ぎ上げるためのわりといけてる一つの方法
2007/2/21 「スーパーハイブリッドコミック『ハヤテのごとく!』」(暫定版)
2007/3/25 「スーパーハイブリッドコミック『ハヤテのごとく!』」