読書感想文の書き方 2008年版 読書感想文を書きやすい本を選んでみました







これを書くのも今年で3回目。10年続ければそれなりに面白いシリーズになってくるかもしれません。
このシリーズの記事を書く時にはこのサイトでは珍しく読む人のことを多少は考えています。読む人がどういう情報を求めているのか、何に興味を持ってくれるのか、それを想像して書くことにしています。
1年目(2006年)はどの作品にも通じるであろう、読書感想文を書く時に注目すると書きやすくなる点を挙げてみました。
2年目(2007年)はサンプルも増えたのでそこへのリンクを貼りました。さらに、原稿用紙を埋めるためのテクニック、それを真似するのは本当はよくないのですが、私が子供の頃には実際やっていたので他人にやるなとは言いづらい、を書いてみました。
3年目の今年はずばり「読書感想文を書きやすい本」に的を絞ります。必ずしも書きやすい本だけを紹介するわけではありませんし、私がまだ読んでいない本の中にものすごく書きやすい本だってあるはずです。
それでも、おそらくはたくさんいるであろう、なにをどうしていいかわからないと思っている子供の頃の私のような人にとって、少しは役に立つ記事になるかも知れないと思っています。


読書感想文の書き方を指南しているサイトは数あれど、先生に褒められるとか、コンクールに入選するとかそんなところを目指すのではなく、とにかくさっさと書く方法を考えていろいろ記事を用意して、さらに大量のサンプルをアップしているサイトは他には無いのではないかと自負しております(笑)。


それでは、はじめましょうか。
「読書感想文の書き方 2008年版 読書感想文を書きやすい本を選んでみました」


まずは、今まで私がこのサイトに感想をアップロードした中で「これは書きやすい」と思った本を挙げてみます。くどいようですが、書きやすいと感じるかどうかは個人差があります。「ええっーーー??」と思うような本も混ざっているかも知れません。





では、個別に見ていきましょう。

森鴎外著『高瀬舟

この作品を選んだ理由。それは『高瀬舟縁起』という関連作品が存在するから。本編を読まなくても『高瀬舟縁起』だけを読めば感想が書けてしまいます。逆に、あえて『高瀬舟縁起』を読まずに感想を書いてみるというチャレンジもできます。
今回の「書きやすい本」の中で森鴎外作品はこの作品しか取り上げませんが、『最後の一句』とか『山椒大夫』とかも読書感想文の対象になりやすいですが、感想を書くのはなかなか難しかったですね。

木村元彦著『オシムの言葉

これは定番。ものすごく感想が書きやすい本です。いくつかの要素が散りばめられて、それを総合することで「オシム」という人の姿が見えて来るというしくみになっているのですが、その要素を1つだけ取り上げても感想が書けるという素晴らしい本です。お薦め。

齋藤勝裕著『分子のはたらきがわかる10話』

他に比べてマイナーな本だと思うのですが超お薦めです。10個の話が独立していて、それを総合して感想を書いてもいいし、その中の一つにポイントを絞って書いてもいい。お薦めはポイントを絞る方法ですね。短いからあっという間に読めます。読んだ内容と身の回りにある物を絡めて感想をでっちあげることができます。

芥川竜之介著『羅生門』『鼻』

ここで取り上げるには抵抗はあったのですが、需要が高いので、ね…。これらの作品が感想文に向いている理由はただ一つ。「短いから」ですね。読むのに時間がかからない。そして文体も平易。読みやすい。感想を書きやすい書きづらいで言ったら確実に書きづらい本なのですよ。小説ってのがそもそも感想書きづらいと思っているのですが、その中でも芥川作品は書きづらい。ここは無難に感想と見せかけたあらすじを書いちゃうのがいいかも知れません。

ヘルマン・ヘッセ著『車輪の下

感想は書けるだろうけれど、子供には読んで欲しくない本…。主人公に的を絞ると感想を書くのがかなり難しい本に見えますが、サブキャラに目を移すとこれほど感想が書きやすい本はないのではないかと。

高橋団吉著『新幹線をつくった男 島秀雄物語』

読書感想文の棚卸しをしていて見つけた本。高校生以上かなぁ。一つの仕事に賭ける男の姿が描かれているので、場面に的を絞って感想を書くという方法が取れます。書きやすいけれど興味がないひとには読むのが辛い本かも知れません。趣味で読んでついでに感想も、という意識で読むのがいいと思います。

臼井隆一郎著『コーヒーが廻り世界史が廻る』・川北 稔著『砂糖の世界史』・伊藤章治著『ジャガイモの世界史』

最後に世界史シリーズ。世界史シリーズは感想書きやすいです。ある商品や作物に的を絞って、その周辺で起こった出来事を描いていくという流れになっています。国語の宿題というより社会の宿題として出されそうな…。これらの本も、一部に的を絞って感想を書くという技が使えるので、時間がなかったり楽をしたかったりするのなら全部読まないでも感想を書けるはずです。







とまぁ書いてきたわけですが、個人的には感想を書く書かないではなく、読むことをお薦めしたい本もあるわけでして…。これから挙げる本は夏休みの宿題としての読書感想文を書くことには向いていないです。でも、面白いし読んでもらいたい本です。


夏休みにお薦めする本

石橋克彦著『大地動乱の時代』 このサイトで書いた感想

個人の趣味。でも未だ色あせていないいい本。

谷川流, いとうのいぢ著『涼宮ハルヒの憂鬱このサイトで書いた感想

ライトノベルについては後で書きますが、ライトノベルという範疇に収まらない作品

樋口一葉著『にごりえこのサイトで書いた感想

非常に読みづらい文体ですが一度没入するとなかなか抜けられない魅力があります。

佐藤健太郎著『有機化学美術館へようこそ』 このサイトで書いた感想

この世界に興味を持つきっかけになるかも…

江畑謙介著『情報と国家』 このサイトで書いた感想

読んでもらいたいとしか言いようがないです。

新井素子著『…‥絶句』 このサイトで書いた感想

読みやすいけれど頭をガツンと殴られたような読後感が残る傑作。ただし手に入りづらいです。

筒井康隆著『48億の妄想』まだ感想を書いていません

高校生の時に読んで、未だ影響を受け続けている作品です。手に入りづらく再読できていません。

畑健二郎著『ハヤテのごとく!このサイトで書いた感想(多数)

ここでこれを取り上げないのは自分を飾っているみたいでいやだ。このサイトは読書感想文サイトとしてではなくハヤテ感想サイトとして知っている人が多いところです。







さて、最後にライトノベルと漫画の感想について一言書いておこうと思います。
今の子供たちがどういう課題を与えられているのかわからないです。課題図書、あるいは作者指定みたいなのがあるのが普通なのでしょうか?もし、そういうのがない場合、今一般で人気があって売れている「ライトノベル」や「漫画」を題材にした感想文を書きたくなる人だっていらっしゃるかもしれません。


私はね、「ダメ!」とは言いません。ただ、お薦めはしない。


ラノベとか漫画とか一見簡単に感想を書けそうに思えるんですよ。私が子供の頃だったら当時好きだった推理小説に置き換えてみればいいんだけれど、「この本で感想文書いちゃおうかなぁ」と思ったことはあった。ところが、実際に書こうとすると難しいんです。課題をクリアするという消極的な理由で大急ぎで読んだ場合、いわゆる名作系の本の方が簡単に感想を書けるはずです。そうではなく、作中の登場人物に感情移入をしたりして、じっくりと考えて書けば感想は書けると思いますが、よく考えてみるとそれはものすごく時間と労力がかかること。好きでなければやってられません。


課題を簡単に片づけるために、ラノベとか漫画を題材に選ぶのはやめておいたほうがいいです。そのラノベなり漫画なりが大好きだからどうしても感想を書きたい!くらいの気概を持って挑むのなら全然問題ないです。
ただ、一般的な評価っていうのを考えると、評価されづらいと思うんですよね。名作ってのは何十年、下手したら百年以上も生き残っている作品。それぞれ何かを持っている。ラノベとか漫画ってのは、生き残るかどうかが未だわかっていない作品です。評価も定まっていない。原典の評価ができていないってことは感想の評価をするのが非常に難しいってことになります。
そういうことを気にする人はラノベ・漫画などで感想文を書くのはやめましょう。気にしない人はガンガン書いていいと思います。そういう強い思い入れの中からとてつもなく面白い感想文が生まれるんじゃないかと私は思います。