田中ロミオ著『人類は衰退しました』極上のSF小説


ネットでよい評判を聞いていて、古本屋にたまたまあったので買ってみました。
よい評判を聞いていたということは評価の敷居値が上がっていたということ。ちょっと面白い程度だと「なんかイマイチ」に自動変換されてしまうということ。
そんな危惧を抱きながら読み進めたのですが、心配は無用でした。非常に面白い小説でした。


ライトノベルと言えばライトノベルなんでしょうねぇ。出版元のシリーズがそういうシリーズだし、かわいい女の子のイラストついているし、一文は短いし改行は多い。でも、そのあたりはすべて見た目の話で、内容はハードです。
人類が緩やかな滅亡を迎えているという設定は秀逸です。滅亡することを受け入れているってのがいい。その考え方が素晴らしいというわけではなく、その設定が素晴らしいということです。いざ自分がその中に身を置いたら素直に受け入れられるのかというとそれはまた別の問題。作中の登場人物がそれを受け入れているということが素晴らしいというお話。


推理小説ではないのですが、詳細は書かない方がいいと思いました。ネタバレしたら価値が無くなるようなヤワな作品ではありませんが、この本を実際に読んだ時に驚いたり思わず笑っちゃったりする方が絶対楽しい。
2巻目以降も買ってみようと思います。






余談ですが、この作品に新井素子作品の香りを感じてしまった。なんだろうねぇ。『絶句』みたいな激しさはないのですが…。読み進めていくとそういう感覚を持った理由がわかるかもしれません。