読書感想文 筒井康隆著『ホンキイ・トンク』

8編の短編小説が収録されている文庫本です。古本屋で見つけたので衝動買いしてしまった。こっちは何とかがんばって個別感想を書いてみます。

君発ちて後

うる星やつら』が好きな人なら、原作アニメともに人気のあった話、「君去りし後」をご存じだろうと思います。実際どうなのかはご本人に聞かないとわからないのですが、筒井康隆高橋留美子という順で読んだ私は「君去りし後」と言うタイトルの元ネタは「君発ちて後」なんだろうなと勝手に理解しました。
ただ、内容は全く違います。「君去りし後」は『うる星やつら』の中でも異色と言っていいラブコメ基調のいいお話です。それに対し、「君発ちて後」は…。人が狂っていく過程が描かれています。「時をかける少女」で筒井康隆を知ってこういう作品をいきなり読んだらどう思うのだろうか?

ワイド仇討

江戸時代から明治時代への過渡期。仇討せざるを得なくなった人たちがショーアップされた疑似イベントとしての仇討をするまでが描かれています。今我々が身を置いている世界はこんな感じの社会になっていると思います。

断末魔酔狂地獄

高齢化が極端に進んだ世界を描いたSF小説。キモイですよ。

オナンの末裔

タイトルからなんとなく内容を想像する人がいらっしゃると思いますがおおかたはずれていないと思います(笑)。エロと言うよりもグロなんだよなぁ。

雨乞い小町

平安時代に時間旅行をした星右京という人物が雨乞いをする小野小町を助けるというお話。
むちゃくちゃやっています。

小説「私小説

引用しましょうかねぇ。

この小説には嘘がある、こんなことが実際に起こる筈はない、これにはいかにも作者自信がこういう経験をしたように書いてあるが、これはすべてでたらめに違いない

今の時代の人がこの言葉を聞いたらどう思うのでしょうか?
エンディングは忘れていたのですが、とても黒いです。

ぐれ健が戻った

一文が短くて会話が多い。まるで今流行りのライトノベルのような小説です。でも、黒いです。
こちらも引用しましょう。

「茶化していいことと悪いことがあるんだ。これは茶化していいことじゃないんだぞ。」

エッセイなどを読むと、どうもこれは筒井さんからの意趣返しらしいのですが、小説で描かれていることは作者の考えだと思ってしまう人にはそうは取れないと思います。高校生の頃、こういうひねくれた本を読んでしまったので未だに小説家や漫画家の描いたことを素直に受け止めることはできません。

ホンキイ・トンク

表題作。強烈な印象が残ります。ヒロイン?のプリンセス・ミオはかわいいです。ものすごく聡明かつ悪い女の子です(笑)。機械におどらされる人間を演じることによって他の人間をコントロールするなんてのは悪魔の発想と言ってもいいかもしれません。この小説も一文が短くて会話が多くなによりページ数が少ないので読みやすいと思います。

まとめ

この作品が発表されたのは1969年のことらしい。すでに40年近い月日が経っているのですが、古さを感じる部分もあれば感じない部分もある。なにより今読んでも面白い。
ここに収録されている作品で学校に提出するような読書感想文を書くことは全力でお薦めしません。人によると思うのですが、筒井康隆作品は感想文を書くには難しすぎる。