読書感想文 森鴎外著『かのように』 「かのように」という怪物

少なくとも私がここまで読んだ中では、一番中学生、高校生、大学生に読んでもらいたい作品がこれですね。自分がその立場の頃にこの作品を読んでいたら、今とはちょっと違う考え方を持つに至ったかも知れません。
歴史学を志し、一生の仕事にしようとしている主人公は、ドイツ留学での経験を期に学問と宗教との間で思い悩みます。そしてその境界線を引かない限り自分が修めようとしている学問はなしえないのではないか、そう思い詰めています。それに対し絵を志す友人は、そもそもそのような線引きは必要なく、あったとしてもぶち破ってしまえばよいのではないか、そう考えています。


うん。考えさせられます。ドイツという国のありよう、それがこの小説の通りなのかはわからないですが、そう、もともと小説というのはフィクションなのでね、それを忘れてはいけない、ドイツという国はそういう問題を乗り越えて成り立っていたのか、そんなことは今まで考えても見なかった。そして、我が日本。今の日本は主人公が危惧していた通りになっているのでは無かろうか、少なくとも私自身は主人公が危惧していたような考え方を持つに至っているのでは無かろうか、そう思えます。
ただ、実際にその中に身を置いてみると、そういう環境でないと成立し得ない学問や文化というのも確かに存在すると私は思います。日本のフィクション、そこには漫画やライトノベルも当然含まれます、それは、宗教的な様々な制約がないから成立したのではないか、そう思えてなりません。
主人公に恋をしているように描写されている少女はもしかすると我々が捨てた何かを象徴するために作者が用意した登場人物かも知れませんね。




今日ここに書いた私の感想は簡単な物で、しかも自分なりの解釈や誤読をはらんでいると思われます。ぜひ原典を読んでご自身で考えて欲しい、そう思います。


読書感想文を書く対象として強く薦めたい作品です。