読書感想文 ヴェーゲナー著『大陸と海洋の起源』

大陸と海洋の起源〈上〉―大陸移動説 (岩波文庫)

大陸と海洋の起源〈上〉―大陸移動説 (岩波文庫)

大陸と海洋の起源 下―大陸移動説 (岩波文庫 青 907-2)

大陸と海洋の起源 下―大陸移動説 (岩波文庫 青 907-2)



この本を読んだのはもう数ヶ月前になります。いずれ感想を書こうとおもいつつ時間だけが経ってしまい……。
副題にもなっていますが、大陸移動説について書かれた著書、というよりも論文といった感があります。論文なので中身について議論できるほどの知識を持ち合わせていない私には感想を書くことが難しいです。この学問をかじったことがあるので、大陸移動説から現在信じられているプレートテクトニクスに続いているということは承知しているのですが、この本で書かれていることはあまりにも多岐に渡っていてとてもじゃないけれど歯が立ちませんでした。


それでも、あえて、一言で感想を言わさせてもらうならばこうなります。




ものすごい粘着!




おそらく、この本が著された当時、ヴェーゲナーは学会で異端だったんだろうなぁと思うんですよね。結局失意の中でグリーンランドで遭難して無くなってしまったという話は今までも聞いたことがあるしこの本にも書いてある。
でも、それだけじゃないんですよね。ヴェーゲナーが評価されている理由はそれだけではないということなんですよ。


思い付きレベルで南米とアフリカの海岸線が一致することから同じような発想に至った人は他にもいらっしゃるみたいなんですよ。ヴェーゲナーがやったこと、それは様々な分野に渡る学術的な調査をし、文献に当たり、証拠を見いだしたことにあるようなんですね。
この本に書かれている様々な事象をまとめるだけでも大仕事だと思います。しかも、それはその時点では本流ではなく傍流の仕事だったんですから。そうとうの思いこみと粘着気質が無いとこの仕事は成し遂げられなかったでしょう。


こういう仕事はその時代には評価されないことが多いんだろうなと思います。そもそも誰もがその時代の「常識」に支配されている中で、その常識を打ち破ろうとする気概がある人はそれほど数は多くないでしょうし、もしいたとしても広く一般に知れ渡ることも無いでしょう。
常識にとらわれない発想は最近話題になっている「擬似科学」との線引きがなかなか難しいです。素人から見ると区別が付きません。もしかしたらその道の専門家でも区別できないこともあるのかもしれません。


『大陸と海洋の起源』では、そこを「圧倒的なデータ量」で打ち破ろうとしています。




読んでいて凄みを感じました。
良い本です。