読書感想文 京極夏彦著『西巷説百物語』 やさしさは、罪

西巷説百物語 (怪BOOKS)

西巷説百物語 (怪BOOKS)





「御行奉為」




巷説百物語。ここまでの主役は小股潜り、あるいは御行の又市と語り手役の百介でしたが、この本での主役は大坂で「仕事」をする林蔵です。


細かい感想を書くとどうしてもネタバレを避けて通れなさそうなのでやめます。ざっくりとした感想になっちゃいますね。こういう本の場合はしょうがない。




とにかく、やりきれないんですわ……。


それほど「いい男」とは描かれていない又市に対して、靄船、あるいは帳屋の林蔵は「いい男」ととして描かれている。


そして、林蔵はやさしい……。


又市が手がける仕掛けには逃げ場がない。しかし、林蔵の仕掛けには逃げ場がたくさん用意されている。過去の罪を背負う人間が、破滅しなくても済むように、それでも「仕事」が成立するように、シナリオを組み立てている。しかし、それでも人は破滅への道をたどってしまいます。
いっそ、逃げ場のない仕掛けで破滅させられた方がまだ救いがあるのではないか?そうとさえ思えてきます。




又市も組んだ仕掛けが終わり、林蔵は大坂を離れ、また、別の場所に旅立っていくようです。
巷説百物語シリーズはまだ四十数話しか描かれていないようです。百話、描かれるのかも知れませんね。




なんともいえぬ読後感……。