読書感想文 有栖川有栖著『女王国の城』 本格推理小説は死なず
- 作者: 有栖川有栖
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この作品は映像化されたら見てみたいなぁ。映像化できるよなぁ。どう考えてもできる。した方がいい。華があるよなぁ。
物語がどうこうとかじゃなくて、本格推理小説と言うからにはメイントリックが命だと思っているのです。そのメイントリックが素晴らしい!ちゃんと考えれば伏線も張りまくられているので気づくことができたんだろうけれど俺は気づきませんでした。そして、それが明かされたとき、根本的な疑問が解決したんですね。爽快でした。
舞台装置は新興宗教が作った宗教都市。嵐の山荘的な設定を現代に作るにはもってこいの設定なのかも知れません。山中の聖地が持つ雰囲気はなんとなく想像しながら読みました。現実と虚構、さらには歴史の違いがあるから一緒にするのは失礼なんだろうけど前に訪れたソルトレイクシティを思い浮かべながら読んでました。
そういう、ある意味平和な街、ではなく村ですね、に入ったっきり出てこない仲間を探しに行った一行の前で事件が起こり、その平和さの裏にある何かを探るために探偵となって行動と推理をしていきます。
メイントリックを取り巻く謎にはちょっと無理と思えるものもありますが、それはそれで関係がないと思っていた事実が関連性を持っていくという推理小説ならではの気持ちよさがあります。
とにかく爽快な本格推理小説でした。その爽快さがどこからくるのか?それは、だまされる、あるいは謎に振り回されるのが主に読者ではなく登場人物であるというところにあるのではなかろうかと思いました。
最近の叙述トリックに代表される「読者をだます」推理小説が袋小路に入っているように思えてならなかったのですが、現代でもこういう推理小説は書けるのですね。もちろん読者もだまされるのですが、だますのは「犯人」であり、だまされるのは「探偵」なのです。探偵と一緒に読者はだまされているのです。しかもこの作品の場合、「犯人」側にだます必然性があるのです。
最近は漫画ばっかりで推理小説をほとんど読まなくなってしまっているのですが、こういう本を読むとやっぱり推理小説を読み続けようかなぁと思えます。
俺が本を読むようになったのは推理小説が面白くてしょうがなかったからなんですから。推理小説を読んでなければSFも漫画もライトノベルも過去の名作も読むことなんてなかったでしょうから。