中川かのん『Birth』感想

買ったときには感想を書くつもりはなかったんです。聞いてみたら感想を書きたくなりました。それも、この日記では極めてまれな「これから買う人に向けた感想」、つまりレビュー的な感想です。
しかし、そういうときに限って購買対象となるものが入手困難っぽいという皮肉(笑)。




Birth 〈初回限定版〉

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Birth

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CDをたくさん買うわけでもないし借りるわけでもない。音楽をダウンロードするという習慣もないです。CDを買う動機は何か気に入った曲がある時です。貧乏根性が染みついているので買うときはシングルではなくアルバムになってから買います。1曲あたりのコストがね(笑)。だからベスト盤とか買うことが多いですね。ただ俺の場合ベスト盤にすら知らない曲が含まれていることが多いですけどね。
とまぁ、そんなきっかけでアルバムを買うのですが、お目当ては1曲かせいぜい数曲なんですよね。それ以外はついてくるおまけっていう意識です。
そして、その「おまけ」の中に本来欲しかった曲以上に好きな曲があると、とても幸せな気分になるんですねぇ。例を挙げると斉藤由貴の「PANT」でいうところの「少女時代」ですね。オフコースの「Three and Two」でいうところの「生まれ来る子供たちのために」です。とてもわかりづらいですね(笑)。とにかく、当初おまけだと思っていたのにその曲を20年くらい聞き続けているんだから元を取りすぎています。


さて、そういう評価基準で言うと、この『Birth』は当たりです。っていうか、はずれの曲は無い。1曲目と10曲目のインスツルメンタルも含めて、いいと思える曲ばかりでした。歌付きの曲の半分くらいがテレビアニメで既に聞いているのでそうなるのは当然なのかなぁと思ったのですが、そうとばかりは言い切れないです。その話はまた後で書きます。
聴いたことがない曲の中で特に気に入ったのは9曲目の「ダーリンベイビ」です。なーんかどっかで聞いたことがあるようにも感じるんですが聞いたことがないようにも感じる。歌詞を聴かなくて曲単品でもこれは好きですねぇ。
収録されている曲それぞれが気に入ったってのを差し引いて考えても、このアルバム、構成がいいですね。曲の並び順に流れがあります。ファーストアルバムの王道なのかもな。デビューから現在までを聞いている人が追体験できるような流れになっています。前半はアイドルアイドルしている感じで、この流れでずっと行ってスパイスとして「らぶこーる」が挟まるのかなぁと想像していたんだけれど、「ハッピークレセント」以降の後半の流れにはみごとに裏切られました。特に「らぶこーる」から、気に入ったって書いた「ダーリンベイビ」、そして最後のインスツルメンタル「Birth」への流れがよかったなぁ。


名前が「かのん」なだけにカノンな曲が多いのかなぁと思ったら、まぁたぶんそれはそれでわかっていても気に入っちゃうんですけどね(笑)、もろにカノンなのは1曲目と10曲目のインスツルメンタルだけだったように思えます。恥ずかしいこと書いてるかも知れないけど(笑)。他の曲にも当然そう言う部分はあるけどかなり変化をつけていますね。
いや、かなり変化というレベルじゃないですね。転調は当たり前だし、5曲目の「ウラハラブ」なんてリズムが途中で3拍子から4拍子(2拍子?)に変化するんだもん。ついていけなくなった。


聞いていて飽きないのはそれぞれの曲がそれぞれ別の空気感を持っているからなんだろうなと思います。そこで作曲者を見てみると、インスツルメンタル以外は全部ばらけているんですよ。そこから妄想したのは……。作曲をした人がイメージする「アイドル」っていうのはそれぞれバラバラ何じゃないかなと。このアルバムには、大勢の作曲者によってそれぞれが持つ「アイドル」というイメージで作られた、もしかすると今回名前の出なかった作曲者によって作られたものを含むんでしょうね、大量の曲の中から厳選した曲を収録したんじゃないかなぁと思うんですよね。
「あっ、これはXXXだ」「こっちはYYYYだろ(笑)」、って思いながら聞いていたんです。もともとは統一感があった物へのイメージを分解して再構築し再度統一したんじゃないかなぁと思いました。
女性アイドルっていう存在が実質いなくなった今でも「絶対的なアイドルのために曲を作りたい」という思いを持つ作曲者はいると思うんですよね。特に子供の頃アイドル全盛だった我々の世代、30台後半から40台には。そういう人たちが作り上げた曲たち何じゃないかなぁと思いました。


このアルバムはまぎれもなく漫画やアニメから派生した「単発の企画物」であるのですが、「単発の企画物」であるが故のクオリティが実現したのではないでしょうか?かつての女性アイドル全盛期には多くのアイドルやアイドル候補に分散していた創造力が、現代ではこういう企画のためだけに結集させることができた、その結果としてこういう作品が産み出されたということではないでしょうか?




さて、3/3の記事に書いたように、入手困難かもしれないというのに通常版と限定版の両方を衝動買いしてしまいました。限定版の方を開封して各種特典を聞いたり眺めたりしてみました。
不思議な感覚ですね。虚実入り交じる感覚。
漫画やアニメの感想を書いているけれど声優さんには全く興味が無く……。よく知らないし、特に好きな人もいない。なので、こんな感じのCDを買うこともめったにないので当たり前のことにビックリしているだけなのかも知れないですが。
中川かのんを東山奈央さんとう声優が演じているわけなのですが、どこが中川かのんでどこが東山奈央なのかがわからない(笑)。演技と現実の切り分けが難しい。特に特典のCDはね。情報があればまた別なのでしょうけれど、予備知識が無いのでどっちとも取れます。もしかすると聞く人によってどう取るか違うのかも。そして作り手はそれを狙っているのかも知れない。




もし、このCDをアニメや原作を知らない人が買うなら特典は不要なんじゃないかなぁと思います。だって、CDを聞いて、そういう企画物であることを忘れましたから。7曲目の「想いはRain Rain」の冒頭でセリフがありますけど、「不自然なくらいうまいなぁ」と思ってしまったくらいです。むしろそっちが本業なんだよね(笑)。


良い曲が収録されているらしいのでとりあえず買ってみようか、って言う人は当然通常版、原作やアニメ、あるいは声優さんが好きな人は限定版というように、同じCDでもターゲットとなる顧客は違うのじゃないかと思いました。




秋葉原では入手困難になったとはいえ、実際どのくらい売れてるのかはわからないですが、仕掛け側の想定通り、あるいはそれ以上に売れたのだったら2枚目も作るかも知れませんね。2枚目でもこのクオリティを維持できるのだろうか?上にも書いたけれど単発の企画物だからこそ実現したクオリティのようにも思えます。
もし、2枚目も相当なクオリティをキープすると、それなりの需要があるのに供給が少ない市場だからアニメとかとは縁がない顧客を掘り起こすこともできるかも知れません。
もしサンデーとかで告知されて目に入っちゃったら次も買っちゃいそうです。