読書感想文 伏見つかさ著『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』9巻
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 9 (電撃文庫 ふ 8-14)
- 作者: 伏見つかさ,かんざきひろ
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/09/10
- メディア: 文庫
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短編集なんですよね。どうすっかな。それぞれの章ごとに感想書いてみてうまくいかなかったら別の方法を考える事にするかな……。
プロローグ
ここだけがこの作品の標準フォーマットです。京介の視点から京介に都合の良いように語られています。
この物語、京介と桐乃がそれぞれ進学しても続くのだろうか?それともそこがゴールなのだろうか?
京介は地元の大学に通いたがっているってのはわかるけれど桐乃がどう考えているのかはわからないですよね。京介視点でしか語られていないから……。
あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使
五更家三姉妹の真ん中、日向視点の話。面白かった。
黒猫が桐乃と沙織に出会う前から8巻クライマックス時点までが描かれています。
痛々しい姉を生暖かい目で見守る妹……。とはいえ、何のかんの言っても姉には幸せになってもらいたいと思ってるんですねぇ。
姉の友人となった桐乃に対して素直に憧れているというのが自然です。もちろん男目線での自然さですけれど。憧れているけれど最初の呼び名は「ビッチさん」だけど。
京介と桐乃と黒猫の奇妙な三角関係を第三者の視点から見続ける事になるんでしょうかね?
真夜中のガールズトーク
前の話からの続きだけれどこっちは桐乃視点。
男目線と書いたけれど、ここでは女性的な表現を感じました。この話、そのまま漫画化したりアニメ化したりすると18禁にせざるを得ない場面がありますけれど、その場面が無駄に18禁なんですよね。無駄ってのはどういうことかというと、全く色気を感じない18禁場面(笑)。周りから見ると失笑物なんだろうけれど、当の語り手本人にとっては極めて自然な全裸(笑)。
前回の感想記事書いた時に「もしかして作者って女性じゃね?」と思ったんだけれど男性みたいで……。その割にはなんか女性っぽさを感じる表現とか展開とかがたまーにあるんですよね。
京介と桐乃、京介と黒猫の関係も奇妙なものですけれど、桐乃と黒猫との関係もまた奇妙なんですよね。全てが奇妙な三角関係。
今まで読者は京介視点でしかその関係を見ていませんでしたが、京介がいないところで桐乃と黒猫が何を話しているのかがようやく描かれました。
まぁ、それ以上にこの話では黒猫の両親と同室で寝る事になった京介を心配する桐乃がかわいいわけですがね(笑)。
俺の妹はこんなに可愛い
赤城兄視点の話。そしてまじキモいシスコン兄貴2人のお話。
麻奈実のひと言きっつwwww
キャラ変わったというか状況が変わったんだろうなぁ。
妹が大好きだから写真をたくさん持っている兄と、妹を大嫌いなくせに妹が出ている雑誌を持っている兄の不毛な戦いです。でもまぁ妹も妹だな。「キモイ」と言いながら写真を送ってくる桐乃も桐乃、挑発に乗って兄にキスをする瀬菜も瀬菜。んで、その話を聞いて動揺する桐乃は相変わらず桐乃です(笑)。
兄と妹、どっちもどっちってことでしょうかね。
カメレオンドーター
沙織視点の話。過去が作中現在につながります。
こっちの姉妹もなかなか状況は複雑なようで……。
かつて姉が作り上げたサークルと似ているけれど、自分自身が付属品ではない形で所属できる物を作りたい、それを作るために、前に見ていたフォーマットから取り入れられるものは全て取り入れた、それが沙織なのかなぁ。
作者の意図がどこにあるのかわからないんですが、沙織の立ち位置ってのが「地理的」に微妙なんですよね。千葉組と地理的に離れてしまっているのでハブられやすいんだよな、どうしても。それもあって黒猫を松戸に引っ越しさせたのかも。などと松戸に住む私は考えてしまいます。心理的には松戸からだと横浜と千葉はほぼ同距離です。ああ、もちろん俺の心理ですよ。他の人にとっては違うかも知れない。
京介、桐乃、沙織、黒猫。この4人の関係は作中でこれからも続くし、小説がエンディングを向かえた後も続くんじゃないかなぁという事を予感させる話でした。
突撃 乙女ロード!
作中ではかなり強烈な属性を与えられているはずの桐乃すらへこたれさせる瀬菜っていったい……。
にしても、妹たちは妹たちで自分の兄のシスコン度合いで戦うってのもなぁ(笑)。変な話だ(笑)。
話のオチはぶっちゃけ俺には理解できない世界ですね。そう言う世界もあるということで。
もちろん桐乃視点です。
過ちのダークエンジェル
あやせ視点。
このシリーズで一番何を考えているかわからない女の子は麻奈実ですが、二番目にわからなかったのがあやせ。なので興味深かった。
まぁ、あやせも京介を取り巻く女の子の一人と考えて間違いはないと。それっぽい表現は多々あったけれど、京介フィルタを通すとよくわかんないからさぁ。
ブリジットちゃんが普通に「あやせさま」と呼んでいるのが面白くも切なかったです。この作中でのあやせの立ち位置はちょっと可愛そうかも。
現実と虚構をまぜこぜにした話ですが、まぁこの話自体は単なる虚構として楽しめるかな?
妹のウエディングドレス
前の話からの続き。ただし桐乃視点。んで表紙イラストはこの話ベース。
かなかなちゃんとブリジットちゃんとClariSが出るメルル関係イベントに行けなくなりそうだった桐乃を京介がいろんな意味で痛々しい姿で向かえに行く話。ウエディングドレス姿の桐乃も痛いっちゃ痛いけれどね。
桐乃が言った言葉はなんなんだろうねぇ。普通に「ありがとう」なのか、この特殊な状況に見合ったもっと別の言葉なのか……。
まとめ
このシリーズ、通して読むと微妙に設定がずれている事が多いですがまぁそれは本質的な問題ではないので俺はあんまり気にしません。推理小説じゃないんだからさぁ。
このタイミングで京介視点以外の話を出してきたのは何となくわかる気がします。
8巻終了時に今までの前提条件がかなり変わったような気がするので。
京介と桐乃の兄妹はお互い嫌い合っている、という(京介から見た)前提で語り始められたシリーズですが、その前提は7巻と8巻で崩れました。いや、崩れてはいないのか。嫌いだけれど大事な人、あるいは一番大事にしてくれる人(であって欲しい)という思いが伝わってしまったからな。
でも、8巻と7巻っていう組み合わせは決して鏡合わせではないような気がしますね。京介の方が身勝手。京介視点で見ると鏡合わせかも知れないけれど桐乃視点でみるとそうではない感じだなぁ。
むしろ、1巻2巻と8巻が鏡合わせのような気がします。窮地に陥った妹を、自分の体を張って、自分の心を押し殺して助けてくれた兄、それに報いるためなのか本能的になのかはわからないけれど、自分の本当の気持ちとは折り合いがつかないはずなのに兄を助けた妹。そっちの方が鏡合わせに思えます。
兄と妹という恋愛展開にするには難しい状況なのに不思議な三角関係ができちゃいましたねぇ。さらに言うと、今はやりなのかどうかしらないですが、出てくる女の子女の子がみんな主人公に関心を持ってしまうという展開。そっちのラブコメ方面では活躍しているのは黒猫だけれど面白いのは麻奈実かなぁ。京介の麻奈実に対する対応が桐乃に対する対応と非常によく似ているので、最初はそう言う方向で話を進めるつもりだったのかなぁと。
麻奈実と黒猫の対決はあるのかなぁ。麻奈実には京介の幼なじみという強みがあって、黒猫には京介の心の鍵を握っている桐乃と親友という強みがありますからね。あと、あやせもいるけどまだよくわからないなぁ。桐乃と親友とはいっても現状では黒猫に追い越されちゃっている感じですからねぇ。
このシリーズには「こうなったらお終い」という明確な終了条件はあるっちゃあるけれどないっちゃないのかなぁと思います。謎の兄妹がお互い素直になったらそれで終了にもできるけれど、それ以外のストーリーで引き延ばす事も出来るでしょう。
黒猫が思い描いているエンディングが作中で描かれるのか、あるいは別のエンディングになるのか?もしかしたら作者もまだその選択はしていないのかも知れないなぁと思います。
次は普通に話が進むのかな?
やっぱこのシリーズあの漫画に似ているよな。登場人物の属性が一つ所にとどまらないでコロコロ変わるんだよなぁ。そこが面白いところの一つですが松戸が出てくる所が一番好きというかそれがなかったらたぶん俺は読んでないな(笑)
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