読書感想文 京極夏彦著『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔』


感想本編

あえてひと言でこの作品を表現するならばこうなりますね。


大人びた少女たちとうだつの上がらないオッサンによる近未来管理社会での冒険譚


人と人とのコミュニケーションが希薄になった社会で「仲間」あるいは「友だち」という概念を持つに至った少女たちと、その少女たちとの交流で自分が生き、守ってきた社会に対する漠然とした疑問を持つに至ったオッサンがなかよく「悪」をぶちたおす、とは言っても、もし事が公になったら世間的には少女たちとオッサンの方が「悪」になるピカレスクロマン的な要素も積み込まれています。


少女たちは単純に好奇心や欲望にまみれて「悪」を行っているわけではなく、いや、それも少し入っているようにみえるからたちが悪いんですけれどね、基本的には「仲間」を守るために行動します。そして時にはその「仲間」から裏切られる事もあります。


読み終えた後、この子たちは悪い事をしたのだろうか?と考えてみました。いや、どうみてもこの子たちは悪くない。そして、周りの大人もこの子たちの行動を、そこには自分たちの都合もあるけれど、とりあえず容認し不問にした。のっぴきならない状況ではあっても人を殺すという大罪を犯しているにもかかわらず容認した。
しかし、これは前の事件から引きずっていることではあるけれど、本人たちからは罪の意識は消えていない。というように読みとれる。


誰かがダメだと言っているからダメなのではなく、自分自身がダメだと言っているからダメなんですよね。それでもどうにもならない状況に追い込まれたらまた……。


組織に守られ、監視される事になったこのメンバーの冒険はまだまだ続くのでしょうか?もしかすると次の冒険はその組織の呪縛から逃れるための物になるのかも知れません。







感想余談

こういううだつの上がらないオッサンが事件に巻き込まれて冒険するっていう筋立ては鉄板なんですよね。俺的にはね。こういう話は子供の頃から何本も読んだ気がする。読んだ気がするだけかも知れないけど。だって具体的に作品名が思い付かない。たぶん西村寿行作品にはありそうだし、当時読んでいた他の流行作家の作品にもありそう。おもしろいんだよなぁ。
ちょっと毛色は違うけれど代打屋トーゴーもそれに近いかな?普段は役立たずなのに条件が合うと力を発揮するみたいな。
このシリーズ、前作はアニメになったみたいですね。見てないけど。アニメになるってところから強引にもってって、これが今風の挿絵をつけたらライトノベルになるかと言うとならないような気がするんですよねぇ。やっぱオッサンは絵にならないだろう(笑)。少なくとも若者向けのライトノベルにはならないだろう。いくら女の子たちを可愛く描いてもそこはダメなんじゃないかなぁ。
そう考えると少年漫画の方が懐は広いよなぁ。大人気のワンピースだってキャラデザ上はともかく設定上は大人の話だもんなぁ。言ったらオッサンばっかり出てくる話だもんなぁ。


この小説にはたくさんの女の子が出てきますが、同じ京極夏彦作品で言うと榎木津礼二郎が持っている属性を複数のキャラに割り振っているように思えました。一番それっぽいのは美緒ですけれどね。
言葉による解決ではなく行動による解決をするんですよね。言葉による解決を図る大人はいなくて行動による解決しかできない子供ばかりと言い換える事も出来るかも。これはこれで痛快で面白いです。


あー、あとなに書こうとしていたんだっけかなぁ。忘れちまった。。。書き足りない所を思い出したら追記するかも。


ルー=ガルー1作目を読んだのはずいぶん昔で内容をすっかり忘れています。掘り出して読み返してみようかなぁと思いました。イマイチツボには入らなかった覚えがあるんですよね。当時は日記も書いてなかったから感想をアウトプットしてないしなぁ。
2作目を読んだらかなり印象は変わるのかも知れませんね。


冒頭に戻ると、オッサンの冒険ってのは別に俺がそう言う年になったから面白いってわけじゃないんだよなぁ。子供の頃から理屈抜きに面白かった。その頃から復讐譚とかバイオレンスロマンみたいなのを割と数多く読んでましたね。でも、今のところ人殺しとかはしていないので、創作によって心を壊すみたいなのはあんまり信用してないです。世の中には心を壊す事が出来る恐ろしい作品が有る事は知っていますけれど、それによって実際の行動にまで至る人ってのはほとんどいないんだろうなぁと思います。心の闇をあぶり出される事は有るかも知れませんけれど……。