読書感想文 伏見つかさ著『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』11巻 謎解き編



表紙からしていままでのこのシリーズとは趣が違う1冊ですね。京介の表情が違う。




結末へ向かうために必要な過去の精算を済ませた、という感想です。推理小説で言うと探偵がまったく関係ない(ように思える)昔の話をするフェーズですねぇ。
このシリーズは短編集ではなくても短い話を組み合わせて1冊にしていることが多かったのですが、11巻では基本すべて過去の話、そして登場人物はほぼ京介と桐乃と麻奈実の3人に終始しています。
この巻に出てきた新キャラというか過去キャラの櫻井秋美って女の子の出番はもうこれっきりなのかな?たぶんそうだとはおもうんだけれど……。性格とか外見はともかく、物語的な役回りとしてはこの娘とかぶるキャラがすでにたくさんいるからなぁ。


桐乃と京介、桐乃と麻奈実、それぞれの関係がぎくしゃくした原因、そして、それも一つの遠因となって今に至るまで壊されずに残ってしまった桐乃から京介への思いがようやく読者と主要登場人物の前に明かされたんですね。そしてそのキーになっていたのが、櫻井秋美だったんだなぁ。
桐乃とは直接の面識は無いはずですけれどネット世界ではそうとは知らずに交流しているみたいですね(笑)。


後書きの後に記された次巻のプロローグによると、次が最終巻とのことですが、本当に1冊で収束するのでしょうか?最終巻が2分冊とか3分冊とかになるんじゃないかなと危惧しております。結局目指す所はみんな同じだけれど、既に結末は決まっているって話なんですよね。京介と桐乃が兄妹でなければとても簡単な話だったけれど、それがあるからややこしくなっているだけで。
桐乃の言葉はここまでくるといっそ清々しいな(笑)。この流れだと「今の」彼女にはかわいそうだけれどそのエンディングも無いように思えますけど。
今まで関係を持っていなかった登場人物たちが、交流を持つようになって大団円という、推理小説ではわりと王道的な展開なのでわくわくしています。


ところで、この小説に対する最初の感想で、たしか「作者は女性では無かろうか」と書いたと思うんですよ。書いたか書いてないかはともかく俺の感想はそうだった。そしてその感想は未だに変わっていないですね。作者本人は男性であっても裏に女性がいるんじゃないかなぁとか。思ってしまう。
次巻プロローグ場面なんか、怖いもん。この娘たち怖い。11巻本編の麻奈実さんも怖かったし。んで、その反面、京介がいいやつすぎる。こういうキャラクター設定って女性作家の場合によく見られるのかなぁと漠然と思っています。具体例を挙げろと言われても、まぁあるけど、この文章は「俺の妹」の感想だから言及しませんがね。
好きか嫌いか、もちろんどっちが優れているかそうでないかなんてことは言うつもりもなく、両方好きだしすごいと思うんですが、作者の性差を感じることは本を読んでいてままあります。この小説にはそれを感じているですよね。
なので、実は11巻に出てきた櫻井秋美は結構気に入ってます。安心して触れることができる男が妄想するかわいい女の子的なイメージがある。作中では難しい女の子として描かれているのに不思議なんですけれど。




最終巻。
最終決戦。
イメージとしては桐乃VS麻奈実VS黒猫あやせ連合軍って感じかなぁ。戦況が変わればすぐに崩壊する連合軍だけど。ただ、敵の京介は既に心を決めているようなので……。
どう転んでも万人が満足する結末にはならない駄ロウなと思うのですが、この物語は最初からそう言う物語だったんでしょうね。
そして満足しない人がたくさん出る、きれいに終わったと感じられない人がたくさんいるかもしれないって事はもしかすると、案外と長い間語り継がれる作品になるのかもしれませんよね。