今日から昔考えたことを思い出しながら物語論を書くのだが、まず、
ぼくの貧困な読書遍歴を書いた方がフェアではないかと思う。
一流のプロとは違い、極々狭い範囲の知識しか持っていない人間な
んだということを明確にしておきたい。


ぼくはあまり漫画を読まない子供だった。読んでいた物で今思い出
せるのは「ど根性ガエル」くらいである。
親が教育熱心だったのか、子供向けの文学全集的な物が家にあった。
その中で夢中に読んでいたのは
・「バルチック艦隊の最期」(日本海海戦戦記物)
・「シャーロックホームズの冒険」(まだらの紐など4本)
である。その二つは今でもはっきりと覚えている。
小学校高学年には「チャンピオン」全盛期がやってきた。みんなが
みんな漫画雑誌を買えるような小遣いをもらっていたわけではない
ので、一冊の本を音読するという楽しみを覚えた。
その時はまっていたのは
マカロニほうれん荘(amazon.co.jp)
である。強烈な印象が残っている。


中学に入り、海外ミステリーを主に読み始めた。
まずは子供の頃読んだシャーロックホームズシリーズから入り、
アガサクリスティ、エラリークイーン、クロフツなど有名どころを
主に学校の図書室で借りて読破した。
そのうち子供心にも翻訳文をよむまどろっこしさに気がついた。
ミスマープルの一作目などは原語でないと謎解きが成立しない。


そこで原著を読む方向を選択していれば今頃人生は変わっていたの
かもしれないが、ぼくは日本の作家のミステリーを読む方を選んだ。
当時は社会派ミステリー全盛期で、松本清張森村誠一、斉藤栄、
西村京太郎などを読んでいた。毛色の違うところでは西村寿行か。
いずれにしろ中学時代はミステリー以外はほぼ読んでいなかった。


高校に入り、中学とは蔵書数も蔵書の内容も桁外れな図書館があり
入り浸ることになる。
毎年学年ごとに、貸出冊数ランキングをつけているのだが、2年、
3年はトップを取った。(例年に比べてレベルが低い争いだったが)
特に2年の時は、地元の図書館、都立日比谷図書館を含め、一年で
500冊以上は本を読んだと思う。
ただし、その内容はまさに乱読としか言いようがなかったようだ。
その証拠に今どういう本を読んでいたのか思い出せない。
このころはミステリーの呪縛から離れ、一般的な小説も読み始めて
いた記憶がある。五木寛之は一通りよんだと思う。


高校2年まではSFには手を出していなかった。高校の図書館は、
今で言うヲタクのスクツで、SFやらアニメやらの蔵書を誇ってい
た。今でもそうだが、世の中で人気のある物に手を出すのを嫌う性
格なのでさけていた。


SFを読み始めたのは高校3年の時だと思う。まずは、今でも続い
ている「グインサーガ」から(作者がミステリーも書いているので
入りやすかった)。当時人気があった新井素子高千穂遥、などな
ど。このときも訳文にたいするアレルギーがあり海外物には手を出
していない。


そして、高校3年も終わりに近づき、受験勉強で疲れ果てた(嘘)
頃に運命の出会いをすることになる。
筒井康隆全集(amazon.co.jp)
何の気なしに手に取ってしまったその第1巻にすっかり取り込まれ
てしまった。
全集なので決して軽くは無い本なのだが、家に帰って寝る間を惜し
んで読んだ。読みに読んだ。
今まで創作世界にはまると言うことはなかったぼくが、すっかり筒
井さんの世界に取り込まれてしまった。決して居心地のよい世界で
はなく、むしろ危険な世界。あのときあの本を手に取らなければ、
今の自分とは違う自分がいたと思う。


高校を卒業するとエンターテインメント系の本が充実した図書館に
行くこともめっきり少なくなり、本を読む量は著しく減った。
なんかの間違えで(後の間違えでは無かったと教授から教わるのだ
が・・・)大学に受かってしまい、専門書と麻雀の日々を送ってい
た。


そんな中で軽い気持ちで手に取ったのが、高校時代友人がはまって
いた「めぞん一刻」だった。
ぼくは筒井康隆体験で、物語にはまるということがどういうことか
はわかっていたが「たかが漫画ではまるんだろーか」というなめた
考えをもっているいやなやつだった。


そして、筒井康隆ワールドに続き高橋留美子ワールドにとりつかれ
た。


当時まだ継続中だった「めぞん一刻」の単行本を買い、ストイック
に連載されているスピリッツは買わずにいた。
そしてもう一つ継続中だった漫画「うる星やつら」にも手を出して
しまった。
第1巻を読んで、うる星やつら筒井康隆の影響下にあることを知
った。


大学時代の思いでは、麻雀、実習、そして筒井康隆高橋留美子
ある。今では考えられないのどかな学生時代。
これから書こうとしている話は、このころ考えたことである。恥を
忍んで言うと
高橋留美子の優しい世界(amazon.co.jp ユーズドのみ)
のスーパー超劣化コピーである。


大学を卒業し、今でいうニートになる才能だけは誰にも負けない状
態だったぼくでも、バブルという時代のおかげで仕事に就くことが
できた。
高校時代、大学時代を通していろいろ文章を書いてみたりしたが、
自分には創造性が欠けているという致命的な弱点があることに気づ
いていた。
でも、物を作る仕事がしたい、物を右から左に流して生活をする仕
事はしたくないなどという生意気な考えを持っていたぼくは、SE
になることを選んだ。


結果的にはSEというよりプログラマーに向いていたようで、その
選択は今のところただしかったと思う。
仕事を始めると、学生時代以上に本を読むことが少なくなった。
メインは昔に戻って国産のミステリー。印象に残っているのは
島田荘司
占星術の殺人(amazon.co.jp)
をはじめとするシリーズ
綾辻行人をはじめとする新本格
時計館の殺人(amazon.co.jp)
時代が過ぎて森博嗣
すべてがFになる(amazon.co.jp)
などが好きな作品である。


そして近年では、京極夏彦の作品
魍魎の匣(amazon.co.jp)
巷説百物語(amazon.co.jp)
に、ぼくは取り込まれた。


いろいろ読んではいたが、高校、大学時代に経験した、筒井康隆
高橋留美子に匹敵する物語には出会っていなかった。
あの頃は子供で今は大人だから、もう二度とあの頃のような物語
へのときめき、期待、切なさを味わうことはないんじゃないかと
思っていた。


でも、特に漫画という表現手法の可能性を信じていたぼくは、高
留美子への全く個人的な敬愛の念を示すこともあって、ビッグ
コミックスピリッツと少年サンデーはこの年になっても読み続け
ていた。
そして、2004年の秋にあの漫画の連載が始まり、2005年夏に、た
った3こまに魅力を感じたその漫画の可能性に気づき、物語世界
に取り込まれることになる。

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タイトルと全然関係ないのも気が引けるので・・・
ネットで1巻の一刷が入手困難という話を見たので、帰りにブッ
クオフに寄ってみました。
サンデーのコミックスたくさんありましたが、一巻二巻三巻含め、
一冊も在庫がありませんでした。
ハヤテのごとく!」という漫画も「畑健二郎」という漫画家も
俺の脳内の妄想なんじゃないかと若干不安になりましたよ(笑)
たまたま「神聖モテモテ王国」があったので四巻を救出しました。
ブックオフでは目にとまるんだけど本屋では買わないなぁ・・・
ごめんなさい

神聖モテモテ王国 1 (少年サンデーコミックス)

神聖モテモテ王国 1 (少年サンデーコミックス)