一回目:奇跡のサイト

前々から書いておこうと思っていたことをこれからおそらく一ヶ月くらいの間毎週書くことにした。今日はイントロダクションとして私の2ちゃんねるとの関わりについて述べる。


私は研究者ではない。プログラマーだ。それも企業の中で使うシステムを使うプログラマーだ。インターネットという言葉を初めて聞いたのは、くるまで通勤していた頃毎朝きいていたJ-WAVEの番組のなかでだった。ジョン・カビラの番組だった。その頃はばりばりの汎用機プログラマCOBOLを使っていた。私には遠い世界の話だった。


その後別の仕事に移り幸運にもインターネットにつなげる環境に身を置くことができた。そこでふれたソフトウエア、それがNetscapeだった。苦労してTCP/IPプロトコルスタックを入れてWindows 3.1をぎりぎりで起動させてその上で動かすアプリケーションの一つだった。
当時は日本語コンテンツはほぼ無いという状況だった。一番アクセスが多いサイトはおそらくNTTのサイトであっただろう。http://www.ntt.jp/ だったはずだ。千里眼とかyahho(yahooではない)などの検索サイトもあったが、今から見るとどこにも行けない状態であった。
そんななか、幸運にもブラウザで商用データベースの内容を表示するという仕事に関わることができた。国内ではかなり早いほうだっただろう。コーディングをがりがりやったわけではないのだが勉強になった。今思うと本当に子供だましのアプリケーションだった。しかし私は思った。
このインターフェースはかならず普及する。
クライアントサーバー型のシステムは導入がつらい。それぞれのPCにアプリケーションを配布しなければいけない。配布を自動化することはできるがそれにはまた別のアプリを開発しなければ行けない。ところがブラウザベースだとブラウザさえあればよい。そしてそのブラウザは軽い(当時の話である)。普及しないわけがないと思った。


企業内はアプリケーションというキラーコンテンツでインターネット(ブラウザが使用できる環境)が急速に普及する事は想像できた。しかし、一般家庭ではどうなのか。新聞、テレビ、雑誌、既存のメディアに勝てる分野はあるのか。ビデオなどのようにアダルトコンテンツが起爆剤になるのか。どうも読めなかった。


今はもう結果が出ている。インターネットのキラーコンテンツは「検索」「通販」「匿名掲示板」だ。


まさか匿名掲示板がキラーコンテンツになるとは。




私が2ちゃんねるというサイトに初めてアクセスしたのは東芝ビデオ事件の時だった。
当時お客様と接する仕事をしていた私にとってこの事件は他人事とは思えなかった。自分の身に降り掛かったときどうするか?そのことを考えるために情報を収集していた。そうして見つけたのが「悪徳商法マニアックス」というサイトだ。このサイトでは東芝問題について主にユーザーの立場で活発な議論が交わされていた。そして、他の怪しげなサイトへのリンクも大量に張られていた。そのなかに「2ちゃんねる」へのリンクがあった。


悪徳商法マニアックスは管理人様がいてその方が管理しているサイトである。いわゆる悪徳商法にひっかかったことがない私がみても非常に興味深いサイトだ。悪徳なのか違うのか、その線引きは人と立場によって異なると言うことがよくわかる。
しかし、そこからリンクされていた2ちゃんねるというサイトはどういうサイトなのかさっぱりわからなかった。無意味な書き込み、無駄に必死な書き込み、まさに読むのは時間の無駄だと思った。だいたい書き込みが全員匿名で管理人もめったに書くことがない。損なさいとが長続きするわけはないと思っていた。


そんな中で、とあるスレッドを見つけた。ドキュンの川流れというスレッドである。今の2ちゃんねるとはずいぶん雰囲気が違うので読んだことがない方は読んでみて欲しい。
これを読んで「なるほどそういうことか」と思った。ここで交わされている会話は飲み屋で気心しれた友達と交わす会話に近い。思ったことを深く考えず言葉にしても許される状況である。自分の身分があかされない状況ならば全くの赤の他人とでもそういう会話が可能になるのだ。思ったことを書くことができる。それが批判にさらされるか同意されるかそれはともかく自分の感覚をそのまま言葉にできてしまうのだ。


これは恐ろしいことだ。今まで表に出てこなかった一般庶民の言葉がそのままの形で公開されるのだ。


追記:過去の著名スレをまとめたサイト「ログちゃんねる」を紹介します。ここに挙げられたあるスレの1さんが、2ちゃんねるの本質とはなにかという問題についての私なりの答えを出す手がかりになりました。(そのスレはここにはありません「2ちゃんねる愛の劇場」に収録されています)


当時はまだ自宅に常時接続を持つなどということは夢物語だった。だから2ちゃんねるの住民もそれほど多くなかったと思われる。
Wikipediaの2チャンネルの歴史を見ると私が2チャンネルの存在を知ったのは開設直後ということになる。ずっと前からあったように思えたのはその前の匿名掲示板の系譜があったからであろう。そのあたりはワイン比呂有紀氏のネットバカ一代というサイトが勉強になった。有名な話であるが未読の方は読んでみて頂きたい。
パソコン通信に加入はしていたが、しきいを高く感じてフォーラムなどには書き込めずただ読むだけだった私にとっては別世界の話である。


繰り返し書くが、当時このサイトがこれほど長く続くとは全く思ってもいなかった。毎年のように閉鎖騒ぎが起こり頻繁に訴えられる、そんなサイトを基本的には個人で管理するなどということは奇跡に近いと思う。
しかし、逆にある程度大規模になってしまうと残るのだと言うことに気づいた。裏の情報が集まるサイトがあったほうが権力側から見ると便利なのである。2ちゃんねるはすでにメジャーなサイトだ。それは疑いようがない。しかしそこは裏への玄関口になっている。裏から漏れてきた情報があるのだ。そんな便利なサイトは権力側として残しておかないわけがない。


2ちゃんねるは日本では十位以内に入る大規模サイトとなっている。私がなぜ2ちゃんねるを見るのか、なぜ書き込むのか、その結論は出ているのだがこれからしばらくの間週に一回を目安に書いていきたい。




こーの知ったかぶりが!と思ったらこちらへ

人気ブログランキング