舞台演劇からのアプローチ

踊り子の雑記
ハヤテに関する個人的考察〜アニメ化記念ってわけでもないが〜
既に試験なぞ終わった気になっている奴がここにいる(ハヤテ考察その2です)
前にも書いたとは思いますが、私も演劇とは縁があります。高校生の頃演劇部の手伝いをしていました。大道具担当で……。
そんなわけでマジメに舞台演劇を見たことはありません。当然感動して呆然としたこともありません。演劇について語ることはちょっと無理。
でも、ちょうど語りたくなっていたんですよね。なぜかというと今週のスピリッツに掲載されていた『オメガトライブ』読んだから。即興劇ですか。存在は知っていたのですが今週ピンと来たんですよ。なるほど、そういうことかと。即興劇の手法を紙の上で使うこともできるんだなと。ただ、それは『ハヤテのごとく!』に対してではないのですけれど…。
Wikipedia インプロ(即興劇)
この説明からは正直何も感じることができないです。しかし、『オメガトライブ』作中で使われたニュアンスから私は直感しました。京極夏彦作品や森博嗣作品はこの手法が使われる過程を作中で描いている。顕著なのは『絡新婦の理』と『すべてがFになる』でしょう*1
ハヤテのごとく!』の場合、まだ完結していないと言う違いもあり、そこまで顕著ではありません。ただ、私の言う「因果応報型物語」には「即興劇」的な要素が含まれていると思われます。登場人物は状況が変わるとそれに適した対応を取らざるを得なくなり、その繰り返しで物語が進んでいく、その要素はあります。
そういうことを書こうかどうしようか迷っていた時に、紹介した記事を読みました。もしかすると演劇からのアプローチの方が核心に迫れるのかもしれません。
現時点での私の意見、想像、考え方とは相反する部分もありますがとても面白く読めました。

もしかするとここは誤解があるかもしれないので私が使っている言葉の説明と言うことで読み流して下さい。
情報格差というのは、知っている情報の登場人物間の格差と、登場人物と読者間の格差です。具体的に言うと、前者は既に明らかになっていますが、ハヤテ君が執事をするまでのいきさつを西沢さんは知っていたけれどヒナギクさんは知らなかったという設定、後者は西沢姉弟の恋する相手は読者は知っているけれど登場人物は知らないという設定がそれに当たると思います。
価値観格差の方は、私が提唱する「ナギの世界」「歩の世界」「ヒナギクの世界」という三つの世界に絡む話で、こちらを今回紹介した話では取り上げて下さったのだと思います。それぞれが自分の所属しない世界に行った時に「異邦人」として振る舞わざるを得ないような構造なのかなと。
前に書いた話の繰り返しになってしまいますが、これが私のこの漫画に対する分析の中核なのでまた書きます。2005/11/22に書いた時には「ナギの世界」「歩の世界」の二つを想定していました。「ハヤテの世界」ではなく「歩の世界」というところが他の漫画と一線を画す所なのではないかと思っていました。異世界に放り込まれた主人公がその世界に同化したときに物語は終わりを迎えるのですが、作者の言葉を信じると西沢歩さんが存在する限り同化することはありえないのではないかと考えています。彼女が「普通」であることに意味があるのならそういうことになります。おそらく、当初予定ではハヤテ君と西沢さんが異邦人だったんだと思うんですよ。そこに、ヒナギクさんを中心とする別の世界を絡めるようにしたら格段に複雑さが増して、かつ、価値観の相違による笑いや物語を作りやすくなったんじゃないかなと思います。三すくみという面白い構造を取ることが可能になりますから。
と思っていたのですが、これを訂正する文章を書いている最中です(笑)。三つの世界というわかりやすい分類はできるのですが、それだけではないと最近思い始めています。

  • セミパブリックな空間

なるほど…。コメントをしようとしたのですが、うまく言葉が出てこない。たぶんそういうことなんじゃないかと思います。書き割りの背景の中で物語を進める登場人物たちのイメージが沸いてきてしまった(笑)。さらに最終回のイメージも沸いてきた。おっしゃるように舞台演劇としてうまくいきそう。作者がおっしゃっている「行ける場所がだんだん多くなる」という設定も舞台演劇との親和性が高いように思えてきました。




私は自分が好きな小説、特に推理小説の読書体験を元にしていろいろ書いています。風車様も豊富な読書体験もお持ちのようですが、主に舞台演劇の知識を元に書かれています。面白いのは二人ともベースが漫画では無いことです。私は『ハヤテのごとく!』という漫画の真の市場は「普段漫画を読まない人」にあると思っています。漫画を読まない人にとってこれほど受け入れられやすい作品は無いと思うのですよ。そして、この漫画を入り口にして、大量に供給されている漫画という文化に触れることができると思うのですよ。


紹介した記事はまだ続きます。次回は咲夜ちゃんファン必見とのことなので、ライク・アライブ 夜のヒットパレード〜なあオールサクヤって知ってるか?〜を書いた橙馬そうま様は必見じゃないですか?(笑)


なんというか、とにかくうれしいです。私の書いた物をきっかけの一つとして書いて下さったとのことで…。全然違う結論になろうともうれしいです。全く違う経路で同じ結論に達してもそれはそれで面白いです。おそらくこの記事を書かれた風車様は私と同様の感覚をお持ちなのではないかと推測しました。この感覚、人に伝えるのが難しいのですよ。少なくとも私にとっては。考えれば考えるほど深みにはまっていきます。ある意味不幸です。一緒に不幸になりましょう(笑)。


文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 10 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 10 (少年サンデーコミックス)


*1:重度のネタバレにはなっていないと判断して作品名を挙げました