法月綸太郎著『犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題』

犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題 (カッパ・ノベルス)

犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題 (カッパ・ノベルス)

星座をモチーフにした作品を集めた短編集です。しかし、思いの外楽しめました。


今でもあるのかどうかわからないですが、私が一番たくさん読んでいた当時推理小説への批判として、「トリックのためのトリックじゃないか」みたいな話があったように記憶しています。そんなことを言ったら小説なんてほとんどが小説として成立させるためのエピソードをつなぎ合わせているだけだと思うんですけれどねぇ。小説に限らず漫画だってそう。
それはともかくとして、後書きで作者も触れているように、この短編集は企画がまずあってそれに対応するトリックを用意したみたいな所があります。まぁトリックというか謎解きのために謎が用意されているみたいな感じですね。
こういうのが好きな人と嫌いな人、それぞれいると思います。実は私はイマイチ好きではない。トリックには必然性がないと謎が解けた時の爽快感が出ない様な印象を持っています。
この本に出てくる謎はパズルチックです。読者はそれを解きながら読むというのが正しい楽しみ方でしょうね。


さて、大変失礼な話なのですが、法月綸太郎氏の作品はそれなりの数読んでいるんだけれど全然覚えていないんですよ。なんでかわからないんですけれどね。ところが、この本には「これは絶対忘れない」という作品がありました。『ゼウスの息子たち』という作品です。モチーフは双子座。当然双子が登場するミステリーです。
いやぁ。だまされましたよ。これは面白かった。この一作だけでもこの本を買って良かったと思いましたよ。ほんと。
推理小説が好きなら楽しめる本じゃないかと思います。それに一つ一つが短いから初心者にもお勧めかも。