畑健二郎著『ハヤテのごとく!』 4巻

2008/3/16 読書感想文 畑健二郎著『ハヤテのごとく!』 1〜3巻
もしも…。は人生にないのだけれど、それでも、もしも…。
私が『ハヤテのごとく!』という漫画を「ちゃんと」読むタイミングが遅かったら、たとえば98話を読んだ時だったり、たとえば116話を読んだ後だったり、たとえばアニメになってからだったりしたら、間違いなくこう言い放つと思います。
「この作者orこの漫画は4巻で化けた」
と。


しかし、現実は違う。私は3巻まで読んだ時点で「この漫画はすごい」「この漫画は今まで読んだどの本とも違う」と理解したんです。
3巻まででどうしてそう思ったのか、そして4巻ではそれがどう具現化されているのか、今までに書いたことも含め今日はちょっと濃いめの読書感想文を書いてみようと思います。


4巻で最も恐ろしいのは中扉です。ヒナギクと雪路の過去が描かれています。その話はちょっと置いておいて、漫画本編の話を書きましょう。


今までは三千院の屋敷という狭い場所をメインにして話が進んでいましたが、4巻からは白皇学院という舞台が加わります。そして、そこには完全無欠の美少女やら、一癖も二癖もありそうな女の子たちやら、怪しい力を持った執事やら、へタレなおぼっちゃまやら、駄目な先生やらがいます。


3巻までを読んで私が理解したのは、この漫画は「一筋縄の物語ではない」ということです。未だにここは感覚的にしか語れないのですが、この物語には

  • ハヤテの借金返済
  • ナギの恋
  • ナギの成長とナギとマリアそれぞれの自立

という3つの柱が用意されていることはわかるのですが、それらすべてを丸く収めるようなうまいエンディングが思い付かないんですよ。でも、私が読んだところ、この物語の終わり方を作者は決めているとしか思えなかった。
???????????
と思ったんですよね。


時系列で語るとこうなるのかな?あのバックステージVol.49は4巻発売前の2005/10/5に発表されています。その時作者本人から物語の終わりは決まっていることが明かされました。それを読んでさらに謎は深まりました。それこそがこの漫画に隠された秘密だと思っていたのにもかかわらず、あっさりばらしたのはなぜなのだろうかと…。


ここで冒頭に触れた中扉に戻ります。
あの絵と、巻末のプロフィールで、雪路とヒナギクの背後には物語が用意されているということがわかります。そう、この時気づくべきだったんです。もしかすると気づいていたけれどわからなかったのかもしれません。
先ほど書いた

  • ハヤテの借金返済
  • ナギの恋
  • ナギの成長とナギとマリアそれぞれの自立

が柱なのだとしたら、ヒナギクは「要らない娘」なんですよ。物語をいたずらにかき乱すだけ。どうせ最後には退場するにぎやかしのキャラです。ところがどうも違う。彼女には彼女の物語が用意されている。だから、この時点で気づいても良かったんです、むしろ気づきべきだったと思います。


でも、もしこの時気づいていたらどうなってたでしょうかねぇ。今だからこそ「スーパーハイブリッド」ってのを聞いて納得して下さる読者もいらっしゃいますが、当時それを言っていたら完全な「電波」だったと思います(笑)。実はそんな心配はいらなかったかも。そのころここを読んでいた人は今より全然少なかったから。一日に100行ったり行かなかったり、ハヤテのことを書いても200越えたら大したもの。今だったら水曜日の1時間でそのくらい行っちゃいますからねぇ。
もしかするとあの時結論に到達しないで、その後紆余曲折を経た過程をここに書けたのは良かったかも知れません。本人的には悔しいんですけれどね。


とにかく、今にして思えば4巻で既に明らかになっているんですよ。


ハヤテのごとく!』という漫画は、一つの物語を描いているわけではなく、作者が作り出した架空の世界の、ある日付からある日付までに起こったことを、その過程で登場人物が思い出した回想や未来予想を含めて描く作品だってことがね。
作者の構想では、始まりの日付がハヤテとナギ・マリアさんとの出会いであり、終わりの日付がもしかするとその3人の別れの日付になっているのかもしれませんが、それは、作中の他の登場人物には関係ないことで、彼ら、彼女らは、そして人生の節目は迎えるけれどメイン3人も、架空の世界の時間をその前もその後も生き続けているそういう物語世界なんだと理解できたはずなんですよ。


漫画として読んだ場合、4巻以降は飛び抜けて面白くなっています。しかし、それがあるのは3巻までがあったから。そしてそこまでつきあってくれた読者がいたからです。ええ。私は違うんですよ。遅れてきた読者なんです。




この先、14巻まで感想を書こうとしているのですがこのテンションを維持できるのでしょうか?(笑)
無理だなぁ…。他の巻は1〜3巻みたいにまとめて書くと思いますけれどね。
とりあえず西沢さんには4巻では触れなかったのはテンション維持のためとご理解下さい。まぁ、実際問題初登場した時にはこんなに活躍するキャラだとは思っていなかったんですけれどね…。