神仙寺瑛著『動物のおしゃべり』人類だけが加われないコミュニティ
- 作者: 神仙寺瑛
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千葉は房総いすみ市に麻雀博物館という施設があります。その名の通り麻雀に関する品々を納めた博物館です。麻雀に興味がある人ならびっくりするような名品、珍品が各種展示されていて、1Fには無料で借りることが出来る全自動麻雀卓が備えられています。
その博物館を運営しているのがこの漫画の版元、竹書房です。麻雀をする人には近代麻雀でおなじみで、一般漫画雑誌も出しているのでもしかすると漫画ファンにもおなじみなのかもしれません。
一部では非常に知名度の高い出版社ではありますが、大変失礼ですが、決して大手ではない。中堅と言ったところでしょうか?
もし『動物のおしゃべり』が大手出版社から出ていたら、たぶん今頃すでに…。
久しぶりに「自発的に」漫画を買いました。ハヤテを買って以来です。その間には他の漫画も何作品か買いましたけれどすべて動機が不純。他の人に薦められてだとか、ハヤテを読むに当たって読んでおいた方がよさそうだなと思ったからだとか…。自分で読んで「この漫画、面白そうだな」と思って単行本を買ったのは2年数ヶ月ぶりですね。
基本設定は一言で終わりです。
主人公(かな?)の幼稚園児、ふじの美伽(ミカちゃん)は動物とおしゃべりできて、動物が人間の姿に見える。ただそれだけです。
ただそれだけなんだけれど、面白いんだな、これが。どうしていいかわからないくらい面白い。主な登場動物として、ミカちゃんちで飼われている秋田犬のタロー君と日本猫のさくらちゃんがいるんだけれど、この2匹(2人)を見ているだけで飽きない。本能全開(笑)。んで、もしかすると本当の主人公かもしれないお兄ちゃん(名前がついていない)は動物としゃべれない。それがまた絶妙。
たぶん動物飼っている人なら萌え転がれるんじゃないかな?これだけで。
内容的にそのまま子供向けアニメにできるかというと難しいですが、ちょっと本能の部分をオブラートでくるめばなんとかいけるんじゃないでしょうか?もし、もう一押ししたら、この漫画ものすごく売れるかも。性別年齢問わず受け入れられる素養があります。帯を見る限りまだ10万部くらいしか売れていないみたいです。潜在マーケットはもっともっと広い漫画だと思います。
さて、ここからは余談。余談ですがタイトルにしちゃった。
基本はお笑い4コマ漫画で、巻末にちょっとほろっとさせるようなお話をスパイスとして効かせている感じなのですが、よくよく考えてみるとなかなか深い要素を含んでいる漫画です。
さっき書いたように、ミカちゃんは動物とおしゃべりできます。お兄ちゃんをはじめとする他の人間は動物とおしゃべりできません。これも当たり前と言えば当たり前。
で、動物は種族を超えてもおしゃべりできているように見える。少なくとも犬のタローと猫のさくらはしゃべっているように見える。
ミカちゃんは動物としゃべれるなんていう変な特技を持っているが故にいじめられるという描写が出てきます。そんなミカちゃんを慰めるのは猫たちです。でも、もし仮に、この作品世界では動物同士が種を超えてコミュニケーションすることができるのなら、実はコミュニティから阻害されているのはミカちゃん以外の人類だけなのではないか?そう思い至りました。
おそらく作者はそこまで考えてはいらっしゃらないと思うのですよ。面白い作品ってのはそういう作者ですら思い付かなかったような深さを内面に隠し持っていたりすることがあるんですよねぇ。
もし作者がそこまで考えていたら、ちょっと怖いな…。