ニコ動とオタ系サイトは共存できない

結局奪うか産み出すかしか無いというお話です。


時代はかなり遡ります。ファミコンがヒットして、家庭でテレビをゲームコンソールとして使うようになった頃。テレビ放送とゲーム機との間でモニターの奪い合い戦争が勃発しました。これは私も直接は知らない。話に聞いているだけ。
時代は変わってインターネットへの常時接続が当たり前になると、今度はテレビ放送とネットで時間の奪い合い戦争が勃発すると言われるようになりました。実際そうなったのか?それはデータがないのでわからないのですが、少なくともテレビ業界に近い人に聞く限り、現場レベルでもその危機感は相当な物だったということです。


さて、どうやらコンテンツビジネスってのは限られた資源を奪い合うのが宿命みたいです。現在、大きな変化が起こっています。


ニコニコ動画とオタ系サイトでの時間の奪い合いです。


各種資料を見ると、ニコニコ動画って利用時間数が長いのが特徴ということになっています。自分の閲覧行動を振り返っても確かに長居してしまいます。そういう特性を持ったメディアです。
さて、ニコニコ動画が出てくるまではその時間に何をしていたでしょうか?Youtubeを見ていた人が多いかも知れませんね。もしかしたらテレビ見ていた人だっているかも。漫画読んでいた人だってもちろんいると思います。
でも、インターネットでいろいろなサイトを巡回していた、って言う人も確実にいるはずです。


伝聞ですが、最近漫画系のサイトはアクセス数がかなり減っているところが多いらしいです。その原因の一つに「ニコニコ動画の定着」があると思っています。利用者層がおそらくかなりかぶっています。
たとえばGIGAZINとか/.とかはどうなんでしょうかね?多少は影響があるかも知れません。おそらく一番影響をうけているのは、漫画やアニメの感想やそれにまつわる情報を提供しているサイトなのではないか、そう推測しています。




興味がある人の数は限られています。その人たちが使える時間もまた限られています。その限られた時間を奪い合っているのですよ。ビジネスとしては当然奪うのは正しいことです。しかし、それではいずれ先細りになることは目に見えています。


ビジネスを拡大する簡単な方法は2つあります。1つは既存の顧客を奪う方法。もう一つは新しい顧客を産み出すと言う方法です。
後者について考えてみます。
具体的にはオタクを増やすと言うことになりますが、個人レベルでそれができるのでしょうか?難しいと思うのですよ。ただでさえ難しいのにオタクというマインドが邪魔をして余計に難しいと思うのです。
漫画やアニメの話は新参者なので違う分野を想定してみます。


AさんとBさんが会話をしています。

  • A「やっぱ直6(直列6気筒エンジン)しか無いよ」
  • B「何言ってるかなぁ。どう考えてもフラットシックス(水平対向6気筒エンジン)でしょう」

Aさんは直6信者、Bさんはフラット6信者という設定です。で、恐ろしいことに自分が信じる物が優れていると言い張っていますが、たとえばBさんは直6のエンジン積んだ車には乗ったことがありません(笑)
そこでやってきたCさん

  • C「何またくだらない話してるの?エンジンなんて飾りですよ。大事なのは足回りとか含めたバランスじゃん(wwwww」
  • A・B「なにいっとるんだ!貴様は!(以下略」

とまぁ冷や水を浴びせるわけですが、AさんBさんは自分の信念を曲げません。そして、これまた恐ろしいことにCさんも実はそれほど車には詳しくなかったりします(笑)。
そんなところにやってきた車のことが好きになりかけているかわいそうなDさん。

  • D「仲間に入れて下さいよ〜。俺もやっと車手に入れたんですよ〜。XXって車」
  • A・B・C「直4は糞!

これまた恐ろしいことにAさんBさんCさんともに直4の車には乗ったことがない。耳学問だけ。


誇張はしているけれど、学生時代この手の不毛な会話をしていました。ええ、何度もしていました。何度も。Aさん、Bさん、Cさんに当たるところにいた私たちはこの会話を楽しんでいるんですよ。それを証拠に何度も何度も同じ話をするんですよね。かわいそうなのはそこにやってきたDさんです。仲間に入れてもらえないかなぁと思ったのにいきなり「糞」だもん(笑)。実は知識レベル同じだったりすることも多いのに。


今の「オタク」と呼ばれる人たちもこういうマインドを持っているのかはわからないですが、我々、というか私は持っています。興味がないひとには理解できないことを延々と語り、同じ興味を共有する人とは口論になる。もちろんその口論も楽しんでいるんですけれどね。端からはそうは見えない。進んでその中に入っていこうとは思わないでしょう。
説明が長くなりましたが、そういう事情があると想像しているのでオタクという母集団を個人個人が意図的に増やすのは相当難しいのではないかと考えています。


オタク向けサイトというくくりで考えると未来はさほど明るくないと考えています。でも、光明は見える。それは、未知のマーケットへの進出。
オタク系サイトって他の系統に比べると大勢読みに来ているサイトが多いように思うんですよね。ってことは、そういうノウハウが知らず知らずのうちに蓄積されているのではないかと思います。もちろん趣味でやる以上、興味がない分野に進むのはおかしな話なのですが、自分が興味持っている別の分野を開拓するという道はあります。そうなると、特に大きいサイトがその道を選んでしまった場合には、必然的にオタク系サイトがさらに縮小する可能性はあります。それでもそれは、かつて隆盛を誇ったラジオがニッチなメディアのと同じ正常な進化の過程と言えるのではないでしょうか。