通り魔

なんか今こうやって生きている俺はただ幸運なだけなんですよね。


「通り魔」という言葉には子供の頃から濃密に接していました。生まれ育った町で俺が生まれるより前に通り魔事件が起こっていたということで、家族にも、周りの人たちにも通り魔の怖さを聞かされて育ちました。正確には何という事件なのか、どこで起こったのかは知りませんが、記憶の中では「町屋の通り魔」として心に残っています。


通り魔は避けようがない。いくら注意していてもどうにもならない。出会ったら運を天に任せるしかない。そんな話を聞かされました。町屋という所はもしかすると一種独特の哲学を持つ人たちが住んでいるのかも知れません。ずれた話ですが、火葬場が祭りで休業になるとかいうハレとケの境目も曖昧なところです。最近増えているらしい新住民はそうではないのかもしれませんけれどね。


犯人に対する怒りは強烈に持っています。公開の場では遠慮した方がいい言葉が羅列されると思うので表には出しませんが。でも、自然災害の時と同様、亡くなられた方、遺族となってしまった方、さらには怪我をされた方に、心の底から同情の言葉をかける気にはなれないです。だって、俺は傍観者じゃないから。俺だってもしかしたら今日あそこに居合わせていたのかもしれないから…。