『ゼロの使い魔』 感想まとめ「虚無(ゼロ)とは何か? - ゼロの使い魔考察」

私の住む千葉県では今夜というか明日未明からアニメ3期『ゼロの使い魔〜三美姫の輪舞〜』が始まります。
私が『ゼロの使い魔』を読むきっかけになったのはアニメ2期のオープニング映像です。あれを見て「これはきっと面白い話に違いない」と勝手に決めつけて原作を読み始めました。
結果的に原作は予想以上に面白い話でした。しかし、アニメの方は…(w。アニメにするってのは難しいんだなぁと改めて思いましたね。


この記事にはアニメ3期の一部ネタバレを含んでいます。それ以上に、この作品世界全体のネタバレにはなっていると考えています。作者がそうおっしゃっているわけではなく、そう読むことには無理があるとお考えの読者も多数いらっしゃると思いますが、私の主観では、むしろ「そう読まない方に無理がある」ということになっております。
この文章で述べようとしているのは、『ゼロの使い魔』という小説で設定の柱となっている「虚無」についてのいわゆる「考察」です。
では、原作14巻までのまとめ感想をはじめます。なお、一部今回同時に述べようと思ったことを書くのをやめました。全部書いちゃうとこの先書くことが無くなりそうなのでそれはさびしいから…。それについてはアニメが終わった時にでも書こうと思います。今までも小出しで書いているし、どう書いても短いはずですから。






ゼロの使い魔』という小説はライトノベルというカテゴリーに分類されています。可愛い女の子のイラストがついていて、主人公とヒロインの微妙な恋愛感情と、それが外部的な要因で翻弄される様が描かれています。


この作品にはいくつかの特徴が見て取れます。
まず一つ「先が読める」という事が言えます。先が読めるというのは決して悪いことではありません。過不足なく伏線を張り、読者を作中世界に引きずり込む効果があります。特に『ゼロの使い魔』という作品ではSFチックな架空の世界を舞台とした物語です。現実とは違う世界のルールを読者が認識する必要があります。それが極めて自然に出来るよう丁寧に解説されています。1巻を読むと3巻までの展開はおおよそ想像がつきます。


そして、もう一つ。それこそが『ゼロの使い魔』の真骨頂というべき点があります。それは「壁」が設定されていることです。


この感想まとめを書くにあたり、『ゼロの使い魔』がベースとしているという『三銃士』を読みました。面白かったです。とても昔の小説とは思えないくらい面白かった。しかし、『ゼロの使い魔』を読んでから『三銃士』を読むと物足りなさが残ります。もちろんルイズという魅力的な女性キャラクターの不在という理由はあると思いますが、それだけではありません。『ゼロの使い魔』では設定されていて事細かに描かれている「壁」が、『三銃士』では、少なくとも一度流して読んだだけというレベルだと感じることが出来なかったのです。
『三銃士』は中世貴族たちのお話です。『ゼロの使い魔』も架空世界の貴族(メイジ)たちが主に登場するお話です。しかし、『ゼロの使い魔』の場合、貴族以外の登場人物が物語のコアに存在します。つまり、主人公が別の世界から来た「平民」であるということ、さらにシエスタがいること。それが大きな違いです。そして、それが物語に深みを与えています。
貴族と平民。それぞれ生きている世界が違う。物語は貴族中心に動いてはいます。しかし、それだけではなく、平民の生活にも目を配っています。それがものすごく大きい。
身分以外にも壁が存在します。わかりやすいのは種族の壁でしょう。人間とエルフ。互いに敵対し、少なくとも人間はエルフを恐れています。現実社会に置き換えると宗教対立と見ることも出来ます。


ゼロの使い魔』ではそれらの壁を乗り越える様がえがかれています。そして、作中でそれらを乗り越える起爆剤となる人物には一人の例外を除きある共通点があります。
虚無の担い手、あるいはその血縁者または使い魔であること。


貴族であるにもかかわらずエルフと恋に落ち?おそらく物語の鍵を握っているであろう貴族とエルフのハーフ、ティファニアを残した人物。そして、貴族であるにもかかわらず平民の恋敵シエスタと酒を酌み交わすルイズ。貴族であるにも関わらずエルフのことを恐れず耳を引っ張ることができるルイズ。彼、彼女らは『ゼロの使い魔』の世界では型破りの存在です。しかし、彼、彼女らによって、この世界は大きな変革を迎えるのです。周りの人たちは彼、彼女らの影響を受けて壁を乗り越えていきます。


身分、国、種族、そして時空。それらの「壁」を乗り越える、あるいは無効にする力、それが虚無(ゼロ)である、そう私は考えています。


そしてその中でもルイズはこの世界の鍵を握る役割を担っています。
「生か死か」
神にしか許されないような選択をすることができる女の子なのです。


この作品の主要ターゲットは男子中学生、高校生とのことです。その世代で読んだり見たりした作品は、小説、漫画、映画、アニメ等ジャンルを限らず、その後の物の考え方に大きな影響を与えることがあります。
今この作品を読んでいる子供たちが大人になった時、もしかすると、本人たちもそうとは気づかないままに『ゼロの使い魔』の影響を受けた考え方を持つようになるかも知れません。


「虚無」という力による理想社会の建設が『ゼロの使い魔』という作品の終着点である。私がそう予想していることを述べてこの文章を終わりにします。




ゼロの使い魔 (MF文庫J)

ゼロの使い魔 (MF文庫J)





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