読書感想文 西田圭介著『Googleを支える技術 −巨大システムの内側の世界』地味な世界


世間一般ではどうかわからないのですが、私はこういう本が読みたかったです。
Googleのインフラはどのように支えられているのか?その疑問に、主にソフトウエアの切り口から応えている本です。
著者が

本書は、情報系の大学3年生程度の予備知識で読み進められることを目指して

とおっしゃっているように、一般雑学の一環として読み進められる本ではないと思われます。私のように体系的に学んだわけではなく、仕事の現場でソフトウエアの技術を習得した人間にはちと敷居が高いかなとも感じたのは事実です。


それでも面白かった。雑学的に楽しめた。


GoogleのソフトはおそらくGoogle以外では使い道が無いように思えます。オープン化したとしても需要がないということです。自社に最適化した物を作り上げている。
コンピュータの歴史を学んでみると、これって別に目新しいことではないんですよね。東京オリンピックのデータ処理のためにOSから作ってみたり、新幹線の予約システムのためにトランザクションモニターを作ってみたりとか昔は普通にありました。不特定多数が利用する、たとえば銀行のオンラインシステムでも同じような事が行われていたらしいです。


気になるのは運用コストですね。最後に触れられていますが、保守工数が心配です。堅牢ではないコンピュータを壊れることを前提として多数用意しているのですが、その壊れたコンピュータを交換する工数が心配。
そんなの誰にだってできる仕事じゃないかという向きもあるでしょうけれど、そういう仕事をする人をたくさん雇うのが実は一番お金がかかること。そこが今のGoogleのアキレス腱だと思います。
もし、その前提が崩れた時、つまり壊れやすいハードウエアを大量に用意するより、高価だけれど非常に壊れにくいハードウエアをそれほど大量にではなく使用した方が安くつく時代がやってきた時にGoogleはいったいどうするのか?興味はありますが、現実的にはそんな時代はやってこないのかも知れません。


最後にこれだけは言っておきたい。
GoogleでもAmazonでも、本当にすごいところを見誤っている人が多いように感じています。私が思うに、この2社が他を圧倒しているのはその持っているデータ量です。元となるデータが無ければどんなに行けてるそれを引き出すインターフェースを作っても無意味です。なので、この本で解説されているデータを管理加工する仕組みというのは、本当に企業を支えているシステムだと感じています。非常に地味ですけれど作っていて楽しいと思います。自分の作ったソフトを世界中の人が間接的に(一部はたぶん直接的に)「空気のように」利用しているんですから。