読書感想文 大江健三郎著『死者の奢り』

ええ。まぁ。そう簡単に感想を書けるわけがない作品な訳でしてね。
実は、大江健三郎作品を読んだのは初めてです。なんかなぁ。読んでなかったんですよ。難しい作品というイメージがあってね。読んでもないのによくそんなことわかるなというのはあるけれど避けてきた。
思いもかけず読書感想文サイトみたいなことをやっていて、せっかくだから読んでみようかと思ったのですがやっぱりなんとも難しい作品でした。


この作品の第一印象。それは生と死、貴と賤です。主人公が属する生者の世界。主人公が触れた死の世界。そして生の世界に至っているのか、その価値観を揺さぶる胎児。死者の声。死体を扱うアルバイトをさげすむ人たち。すべては書くまい。


おそらく、この作品を読むと人それぞれ違う感想を持つはずです。たとえば主人公はこの経験を通してどういう考えを持つに至ったのか?それを自分なりに考えてみれば、他のどこにもない感想文ができあがるように思えます。そういう意味では感想を書きやすい本であると思われますが、作者の意図をくみ取ろうなどという大それた事を夢想してしまうととたんに難しい作品になります。主人公の考えることと作者が考えることは切り離して考えるべきであり、おそらくこの作品ではそういう読み方がされることを想定していると感じています。


この作品、文章としても非常に面白いです。面白い、というのは裏を返すとわかりづらいです。そして、世間一般的には「よろしくない」とされているような表現が多々見られます。そして、それは恐らく作者が意図的に散りばめているぶれ。そういう細かいところに突っ込んでいくと全体を見失うと思いますが、逆に全体がどうしても見えない場合にはそういうところに突っ込んだ感想文を書かざるを得なくなっただろうなぁと自分が子供の頃を想定するとそう思います。


入手したのは他にも何編か収録されている文庫本です。ゆっくりと読み進めてみようと思います。