読書感想文 大江健三郎著『他人の足』

病気や怪我のために歩くことができなくなった青少年を集めた療養所が舞台の小説です。
と聞いただけで読む気をなくす人もいるかも知れませんね。俺もそうです。でもちょっとだけがんばって読んでみた。短かったしね。


19才から14才まで7人の自分では歩くことのできない子供たち。その中には一人だけ少女がいますが、あとの6人は男の子です。
まぁ、若いからねぇ。看護婦さんがねぇ。そういう秘め事も日常的に行われているという設定になっています。


そこに一人の学生さんがやってきます。文脈から、既に療養所にいた少年たちとは違い怪我をして両足やってしまったらしいです。
彼は看護婦さんとの秘め事を拒み、そして、少年少女たちに現状を打ち破ることを説き始めます。いわゆる左翼の活動家的な方向性です。実際ソビエトの話や毛沢東の話を主にしていたらしいです。


彼によって少年、少女たちはだんだんと変わり始めますが面白くないのは主人公の少年です。学生さんには何らかの欺瞞があるのでは無かろうかと疑いつつも、学生さんたちとうち解ける他の少年たちをうらやむ気持ちも持っています。
主人公ともう一人、自殺未遂をしたばかりの少年は孤立してしまいました。


そして、この物語の終盤、学生さんは……。


とまぁ、こんな話ですね。
昭和32年に発表された話のようです。さすがに俺も生まれてなかったので当時の世情はわかりませんが、当時の若者たちはこの小説に愛憎入り交じるような感想を持つことができたのかもしれませんねぇ。
ラストシーンからは、結局のところ指導者は指導者でしかなく大衆にはなりえないというようなことをこの小説で描きたかったのかなぁと思うのですが読み過ぎか読み足らなさ過ぎかも知れません。


感想文を書くにはあまり向いている本では無さそうな気がします。でも、それだってあくまでも俺個人の感覚なので、この短編でいくらでも感想が書ける人がいても驚くには値しませんけれどね。