誰にでも簡単に無料でできる地盤液状化対策 土地条件図

今日、珍しく家に帰ってきてからNHKのクローズアップ現代をやっていました。ひどいですなぁ。液状化
私にとっては決して他人事ではありません。今回の地震では自宅がやられたかと直感したのに電話がつながらず……。何とか連絡が取れて、帰宅難民になりながらも家に帰り着いて、住める状態であることがわかって申し訳ないけれどものすごく安心しました。
私には覚悟ができていました。今自宅が建っているところは液状化の危険が有ることを知っていました。そういう知識を無駄に持っているオタクだからです。
私の自宅の場合は地形を見れば一目瞭然、こりゃだめだとわかります。しかし、そうでないところもたくさんあります。
冒頭に挙げたクローズアップ現代では、すでに傾いてしまった家を修復する方法が紹介されていました。そちらの知識は残念ながら持ち合わせていません。しかし、古地図を見て元の地形を割り出そうという作業も映し出されていました。そうすることによって、これから買うべき家や土地にリスクがあるのかを調べることはとても大事なことです。そして、その方法は正しいです。原地形がわかれば少なくとも液状化リスクの有無と大きさはわかります。


しかし、古地図を見る必要が無い場所もたくさんあるんです。大都市近郊なら見る必要はないところが多いのです。
なぜなら、
土地条件図
があるから!


国土地理院 主題図 土地条件図




この地図をこの日記で紹介するのは少なくとも2度目だと思います。これがインターネットに無料でアップロードされているのを見て腰を抜かしました。欲しくて欲しくてしょうがなかったんですよ。地図オタク心的に。
しかも、防災にも役に立つんですよ。主従が違う!とおっしゃる向きも有ると思いますがとにかく面白くて為になる素晴らしい地図です。
地図を読むことにあまり心得がない方も読みに来て下さる記事になってくれたらうれしいなぁと思うので、簡単に使い方と凡例の解説をしますね。
まず使い方。簡単です。
上記リンクの日本地図に「東京」とか「千葉」とか書かれた升目があります。その升目のうち、オレンジ色になっているところが土地条件図が作成されているところです。
オレンジを適当にクリックします。たとえば今回被害が出た浦安が入っていそうな「東京」のあたりをクリックしてみましょう。そうすると、もうちょっと細かい升目が出てきます。浦安はどうやら「東京東南部」の右側に出てくるみたいなのでクリックしてみます。
そうすると土地条件図が表示されます。もともとかなり大きな地図(通常の地図の4倍の大きさ)をそのままの縮尺でネットに上げているのでちと見づらいですし、Google Mapのように使いやすい工夫もされていませんが、スクロールして「右に移動」というところを何度かクリックすれば浦安市エリアにたどりつきます。
そうするとたぶん気づく人が多いでしょう。まだディズニーランドがありません(笑)。そうなんです。土地条件図は古いんです。この地図は昭和53年ですね。最近新版が出たって言う話は聞いてないけれどそもそもこの地図の新版が出ても誰にも聞こえてこないとも思います。今回の使用目的の場合は古くても問題有りません。原地形を見たいのですから。
とにかく、浦安エリアを見ると黄色の下地に横線が引いてあります。これはなんだろう?と凡例を見てみると、いや、この凡例も素直には別窓に開かさせてくれないんですよね、ちょっと使いづらいですが……、それはいいとして凡例を見ると、高い盛土地となっています。まぁ、ここでは凡例を見る必要が無くて埋め立て地であることは一目瞭然なのですが……。


もう1カ所今回話題となっている久喜、栗橋周辺も見てみましょうか。土地勘がないのでとまどいましたが「鴻巣」のエリアみたいです。地図を表示するところまでは浦安でのやり方と同じなので割愛します。
具体的に今回液状化したのがどこなのかは知りませんが、地形は特徴的です。
浦安で指摘した黄色の下地に横線と似ていますが、単なる黄色のエリアが目立ちます。そこを凡例で見ると「自然堤防」と書いてあります。
自然堤防というのは、その名のごとく河川が自然に作った堤防です。河川が氾濫をすると、土砂がある特定の場所にたまっていきます。そのたまったところが自然堤防で、周辺より若干標高が高いです。そういうところは居住の条件が良いので比較的早くから宅地化しています。栗橋駅幸手駅の周辺がそんな感じですね。
もっと条件が良いのは台地の上。恥ずかしながら知らなかったのですが久喜駅って自然堤防上ではなく台地上にあるんですねぇ。この赤っぽいだんだらって台地だよね。こういう微妙な色のニュアンスはやっぱり紙で見た方がわかりやすいですね。
それはともかく、その安定した台地と思われるすぐ横には盛土埋土のエリアが広がっています。この地図も昭和53年版。もしかするとこの地図では「建設中」となっているエリアでも若干の問題は発生しているかも知れないなと推測できます。
自然堤防と台地の上はすでに開発されていたので、居住地としては条件が悪いその背後の低い土地、地形としては後背湿地と言われるところにも宅地開発の手を伸ばしたのでしょうね。
地形は違いますが我が家が建っている場所と同じような経緯です。


家を買おうとしていて、地盤液状化のリスクを負いたくないと考えている人は、土地条件図は見た方がいいです。真っ平らに造成された土地であっても、ほんの数メートルの違いで地盤の良い台地と地盤が悪い盛土ということも往々にしてあります。大規模な地盤改良が行われたところでは25,000分の1という精度しかない土地条件図にはちと荷が重いかも知れません。しかし、他ではなかなか手に入らない情報がこの地図には書いてあります。


クローズアップ現代を見ていたとき、話の流れからはこの地図を紹介すると思いました。しかし結局「土地条件図」という言葉は出てきませんでした。
こんなに良い物があり、税金を使って無料で公開してくれているのに紹介しないなんてもったいないです。
もしかすると一部のマニアとプロにしか知られていない情報なのかも知れないので、くどいですがまた紹介してみました。


なお、国土地理院ではこのほかにも防災や生活に役に立つ(そして趣味的にも面白い)地図を出しています。しかもそれをネットで見ることができます。

土地条件図、都市圏活断層図、火山土地条件図、治水地形分類図、航空レーザ測量、地盤高図、国土環境モニタリング調査、宅地利用動向調査、湖沼湿原調査、沿岸海域土地条件図。
主題図というのは本来何らかの目的に添った形で編集された地図のことですが、もしかするとその目的を越える使い方だってできるかもしれません。
工夫を凝らした民間の地図をインターネットで閲覧するだけのも楽しいですが、本丸国土地理院にもこれだけの情報が公開されているのです。多くの地図は国土地理院が発行した地図を編集しただけなのですから。