読書感想文 宮部みゆき著『ICO−霧の城』
- 作者: 宮部みゆき
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宮部みゆきファンタジー。この作品ではどんな現代的な課題をあぶり出すのかという興味を持って手に取ってみました。
そしたら、思ったのと違った!これはがちがちのファンタジーじゃないですか!ブレイブ・ストーリーみたいな社会派ファンタジーじゃないじゃないですか!
んで、面白いじゃないですか!!
解説を読むまで、この作品がゲームのノベライズものだとは知らなかったんですよね。ゲームやらないですし。帯とかでもうたわれてなかったですし。
ノベライズである事を前面に押し出していないってのは、ゲームファンに向けて売りたいわけではないんだろうし、そういう紐がついていることを喧伝しなくても評価される作品であるって事なのかなぁと思いました。
もし仮に原作にゲームがあると言う事を知っていたらそもそもわざわざこの本を手に取る事はなかったでしょう。
ゲームに限らず、マンガでも、正直言うとアニメでも、元の作品があってそれをノベライズしたのって、あまり良い印象を持たない事が多い、というかほとんどなんですよね。
原典の人気に乗っかって商業的な要請から産み出された作品であって、ノベライズ後の作品への品質は求めていないんじゃないかなぁと思う事もしばしばあります。
しかし、この作品はそうではなかった。少なくとも原作のゲームを知らないおれにとってはそうではなかった。
逆に、読んでいる途中で、この作品をゲーム化したらどうなるんだろう?という全く持って無駄で意味のない妄想をしたくらいですから。
その場合問題となるのは「第三章−ヨルダ 時の娘」の扱いです。ずっとずっと回想が続くというのはゲームとしては退屈だろうし、ゴールが決まっている物語を追うためだけにコマンドを入力するのもだるいだろうしなぁと……
実際のゲームではこの部分どうなっているんでしょうかね?あるいはゲームの設定から作者が創造の翼を広げた部分なんでしょうかね?
単体の物語としてこの小説を読むと、主人公が止まった時を動かすまでを描いた作品ということが言えるのでしょう。やはり時の流れって言うのは本能的に感動を呼ぶものですねぇ。
この小説はこれでお終いですが、イコとヨルダの物語はこれからも続く、そんな広がりを感じさせるエンディングでした。
ちょっと集中して宮部みゆき作品を読んでみようかな。