読書感想文 江戸川乱歩著『D坂の殺人事件』探偵小説の誕生と死





江戸川乱歩作品って実は読んだ記憶が全くないんです。記憶がないだけで読んでいるとは思うのですがねぇ。
ふと思い立って飛行機の中で読むように買ってみました。




海外の古典を読んだあとは何となく日本の社会派に手を出してしまったので日本の古典は抜け落ちているんですよねぇ。それでも何本か読んだ事はあって、いずれも日本の古典独特の香りがあるなぁと思った事は記憶しています。
そして、この『D坂の殺人事件』にも日本の古典独特の香りを持つ作品が多数収録されていました。
その香りを言葉にするのは難しいし不正確な表現になってしまうんですよね。メタな視点があってオチがあるとか、語り手が探偵ではないとか、いやいややっぱりぱっと考えても例外があるよなぁ。だからこそ香りとしか表現が出来ないんでしょうね。


最近の日本の推理小説を読むと、原点に回帰しているのかなぁとも思えます。リアルに感じる事ができる、あるいは論理的に隙がないと思えるようなトリックはおおかた出尽くして、むしろ人の心や錯誤をといういわゆる本格とは言えないような「トリック」を本筋に据えた作品が多いように思えます。


少なくとも日本においては、推理小説、あるいは探偵小説はその誕生まもないころから袋小路にはまることを予見していて、しかしそこから社会派とか伝奇系とか新本格といった活路を見いだして行ったのかなという感想を持ちました。




明智小五郎って初登場時はこんな感じだったんだなぁ。