読書感想文 伏見つかさ著『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』10巻



口絵を見ただけでわくわくしたけれどちょっと思っているのとは違った。



要約すると短期間一人暮らしをすることになった京介の部屋にかわいい女の子たちがとっかえひっかえ遊びに来る、そしてラストシーンで……ってことになるでしょうかね?


全体的に見るとこの物語も終わりに近づいているのかなぁと思います。ここまで、京介と桐乃を中心として、それぞれが属するそれぞれのコミュニティがあまり関わりを持たずに別々に描かれてきましたが、京介の引っ越しというイベントをきっかけとして、桐乃の表と裏両方の友人が一同に会する場ができました。そして、その場には京介の級友もいるはずでしたが、来たのは1人だけでした。赤城がこの場に来れないことにしたってのにはどういう意味があるのかなぁ。意味は特になくて話が進めやすいからなのかなぁ。
今まで接点が無かったメンバーが一堂に会する場面になると終わりが近いのかなぁと思えるんですよね。


あやせと黒猫の初遭遇は思った通りに殺伐とした感じでとてもよかったです(笑)。口絵の通り。しかし、案外とこの2人は天敵という雰囲気はなくなりましたね。ラストシーンでは2人がこの物語の中では同じような立ち位置に立ったのかなぁという印象を持ちました。
4巻から8巻にかけては黒猫がそれまでとは違う、記号性だけではないキャラになりましたが、あやせも告白をきっかけにしてそうなるのかもしれません。


京介と桐乃の関係は物語当初からは大きく変わりましたが、それ以上に物語が始まってから構築された人間関係も変わっています。
この作品は最初から終わりが決まっているわけではなくて、作者と編集者が都度この先どうするかを決めているんじゃないかなと想像しています。もちろんちょっと先までの話は決めてから書いているでしょうけれど、現時点でも結末までは考えていないんじゃないかなぁ。
そうだとすると、広がった人間関係を収束させるのはかなり難しい力業になるんだろうな。
京介を中心としたハーレム系ラブコメとしてみれば、読者の多数が納得いくかどうかはともかくとして、ありそうな着地点は見えているし、その場合のラスボスもわかっているのですが、いきなりそこに着地するのは難しいだろうなぁ。




ここからは細部。思いつくままに書いてみます。


表紙は詐欺ですね(笑)。前にも書いたけれど、桐乃が京介以外にまずい料理を食べさせるという光景がどうにも想像できないです。料理が下手っていう設定であっても、彼女のキャラ付けを考えると、人様に振る舞うまでには練習してそこそこの物が作れるようになっちゃうんじゃないかなぁと。


松戸在住で学校も変わった黒猫さんは未だに千葉に遊びに行くようで。松戸にいると千葉に行く気にならないけれど、用事があればそんなに遠いって訳じゃないのかなぁ。新しい制服もデザインしてもらえてまた商売になるんじゃないでしょうか?(笑)
学校始まる前に松戸から千葉に動くってのは半端無い行動力だと思いますが、その前に合い鍵使用で来訪していたあやせは相変わらず安定している。怖いねぇ(笑)。
朝っぱらから修羅場とは豪勢ですねぇ。
京介と赤城と御鏡ってのは案外と良い感じでした。趣味も属性も違うけれどこの3人は同世代。違いがあるだけに良い友だちになれるのかも知れません。


深く考えずに判断をすると、サブメインヒロインともいうべき立ち位置になる麻奈実さんは相変わらず怖いです。加奈子はともかく黒猫まで手なずけやがった。うまくいかないのは桐乃だけ。でもそこもなんとかなりそうな……。


そっちの話は収束しそうな雰囲気だなぁと思っていたら、今度はあやせの告白。いや、もしかしたら次巻冒頭でどんでん返しはあるのかもしれないけれどね。例によって。
もし仮にあやせの言葉が額面通りの物だとしたら彼女は黒猫以上に葛藤があっただろうなぁ。桐乃の存在はもちろんのこと、お姉さんもいるわけなので。
この話、膨らむのかすぐに収束するのか……。


次巻は桐乃と麻奈実のお話が描かれるのか、あやせがメインになるのか……。兄妹の不自然な対立という軸はほぼ失われたけれど、京介と桐乃の2人を中心とした話になるってことには変わりないんだろうなぁ。