東京下町の複雑立体交差

複雑なものというのはマニア心をそそるものです。しかしその複雑なものがあまりに身近にあるとその魅力に気がつきません。
私が何十年もの間毎日のように通過している場所は、そういう身近すぎて気がつかないが少なくとも日本では希少な複雑立体交差です。







東京の下町エリア。常磐線東武スカイツリーライン(伊勢崎線)という大幹線に京成本線東京メトロ、都電、新交通システム、さらにつくばエクスプレス(TX)が絡み合っています。
中でも南千住、堀切から綾瀬、五反野に至るまでの間は大スペクタクルが展開されます。
地下駅の三ノ輪から駆け上がった日比谷線がその勢いで隅田川貨物駅への線路群を乗り越える。その横には常磐線の高架駅があり地下にはTXの駅がある。その3路線がいったん同じ高さに集約して隅田川を越え、今度は京成の高架下を一緒にくぐる。北千住の駅が近づくとまずTXが高みを目指し、それに連なるように日比谷線が上昇を始め、東側からは同じように京成の下をくぐり抜けてきて留置線とともに複々線状になった東武スカイツリーライン常磐線に寄り添おうとするところでアクセントとなる大踏切に遭遇し、地下には人知れず千代田線が忍び寄る。三層構造で川と川に挟まれた北千住を出るとすべての線路が一時的に横に並び人間が作った大河荒川放水路を越え、五複線が三複線と二複線に分かれ東武スカイツリーラインの各駅停車は小菅で小休止する。その後豪快な立体交差をしながらTXはまた地下へと吸い込まれていきます。
調べきった訳ではないのですが、複々線以上の線路同士の立体交差というのは実は貴重です。新今宮と新幹線がらみでの品川ぐらいしか思いつきません。他にもあったら教えてほしいです。


このエリアには他にも立体交差があります。
一つは曳舟押上周辺です。東武スカイツリーライン京成押上線、それぞれが東京メトロ都営地下鉄に乗り入れるために高架から地下へと駆け下ります。東武亀戸線と京成との地上での立体交差と押上駅での地下立体交差が至近距離で続きます。
また、非常に地味ですが町屋駅は高架と地平、地下に駅があり全く目立たない地味な立体交差を構成しています。
この記事を書くためにぼーっと地図を見て気づいたのですが、日暮里舎人ライナーの開通によって、西日暮里駅周辺がかなりごちゃごちゃしました。もともと京成が常磐線を乗り越えてすぐに同じ高さの日暮里駅に入り、貨物線もあったので複雑ではあったのですがそこに日暮里舎人ライナーが加わることによって地下の千代田線も含めると5つ(山手線京浜東北線東北本線東北新幹線を分けて勘定すると8つ)の路線が関与する鉄道密集地帯となっています。


多数の鉄道事業者により構成された複雑立体交差は、それぞれの線路は接続されていないことも多く趣味として非常におもしろいです。北千住周辺や押上は京成と東武がそれぞれ山手線の駅を目指し競争した古戦場ともいえるところだし、西日暮里周辺はその後武蔵野線周辺に築かれたような貨物のための鉄道インターチェンジに他の事業者による旅客線が加わってこうなったのかなと思います。
普段何気なく通っている場所でも、少し観察すると新しい発見があって知的好奇心(ときれいな言葉を使ってみましたがただのオタク魂)をくすぐられるのです。