第一日:らくえん



まほらばという漫画がある。月刊のガンガンWINGという雑誌で連載されているとのことだが、僕はこの雑誌を今まで見たことがなかった。今回、この漫画を読んでみようと思ったきっかけは、もちろんハヤテのごとく!関連である。ハヤテのごとく!が美少女わんさか萌え漫画という側面を持っている以上、同じような属性の漫画を全く読まずに考察するのは無理があると考えていた。インターネットは便利な道具だ。いろいろと検索をして、買うのに無理がない分量で自分が気に入りそうな漫画を探してみた。その中で白羽の矢をたてたのがこの「まほらば」という作品である。


この作品を選んだ理由は

  • 疑似家族を描いているとのことだった
  • 作品の基本設定の一つに興味を持った

の二点である。


まず、最初に三巻まで購入し、気に入ったので翌週残りの四巻から十巻までを購入した。インターネット上での評判以上に僕にとっては良い作品だった。今回は三日間にわたり、ハヤテのごとく!の十日間同様の考察をまほらばについて行ってみたい。


さて、この漫画のあらすじを僕なりに書いてみよう。
絵本作家になることを夢見て専門学校に通う「白鳥 隆士」という青年が、課題をこなす時間、勉強の時間を増やすためおそらく福島県、あるいは茨城県北部から東京に上京する。
住まいは親類が経営する都心に取り残されたような古い木造のアパート「鳴滝荘」だ。
そのアパートには個性的な人々が暮らしていて、一種独特の世界を構成している。そこの大家さん、つまり白鳥君の親類は十六才の女子高校生「蒼葉 梢」であった。彼女は、同級生で鳴滝荘の住民でもある「茶ノ畑 珠実」によるといい意味でも悪い意味でも「温い」人である。その「温さ」がこの作品世界を支えていると言ってもよい。
珠実ちゃんはいろいろと特殊な能力を持っている。その能力は梢ちゃんを守るため、あるいは話を面白くするために使われている。
鳴滝荘の他の住民も紹介しよう。「黒崎 沙夜子」「黒崎 朝美」親子は非常に貧しい。いつも内職をしている。母 沙夜子は実は資産家のお嬢様であり、駆け落ちをしている。娘 朝美は、沙夜子の実の娘ではない。駆け落ちした相手が施設から引き取った子供である。しかし親子の絆は実の親子以上に深い。
「桃乃 恵」は宴会担当。めぞん一刻で言う一ノ瀬さんのような存在である。この漫画は彼女を中心として話が進むことが多い。「灰原 由起夫」十巻まででは正体が明かされていない。右手にはめた人形を介さないと話すことができない。
主要登場人物はこの七人である。それ以外の登場人物としては白鳥君の同級生、梢ちゃん、珠実ちゃんの同級生、朝美ちゃんの同級生、街の人々、そして、沙夜子さんの実家の人々がいる。


漫画は白鳥君と梢ちゃんの恋物語を軸に展開していく。そして鳴滝荘の住民達は「疑似家族」を構成している。


この物語は前述したように「鳴滝荘」という場が舞台となっている。ここに暮らす人々は、それぞれ問題を抱えてはいるが、この一種の楽園、ユートピアで暮らしている。そして今のこの毎日が永遠に続けばと願っている。それは作中の随所で登場人物が認識している。さらにこの作品のタイトルにもそれがこめられている。


物語の構造は単純である。その一種のユートピアに別の世界から一人の青年がやってくる。そしてユートピアを支えている少女とのラブストーリーが展開される。さらに、彼と彼女を取り巻く人々それぞれの物語もまた別に展開されている。


この作品の根幹は「蒼葉 梢」という少女の「温さ」にあると思われる。彼女珠実ちゃんのように異常な能力は持っていないが、ある意味で超人である。まほらばという作品は彼女なくして存在することはできない。彼女が構築した世界で暮らす人々、彼ら彼女らが別の世界に旅立たなければならなくなることを予感させる、そしてそのことを登場人物自身も了解している、そのことがこの作品の「切なさ」の構造であると考えられる。


そしてこの世界を構築した梢ちゃんも、他の登場人物の旅立ちを見届けたあとでいつかは白鳥君とともにこのユートピアを離れてしまうのではないか。それを予感させる、非常に良質なストーリーである。

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うーん・・・準備不足だよな。もっと練らないと書けない人なのか、おれは、、、