第二日:とうごう

さて、一日目に書かなかったこの漫画で最重要な設定がある。それは作中で「解離性同一性障害」という名前で紹介されている、いわゆる多重人格である。まほらばのヒロインである蒼葉 梢ちゃんは、この病にかかっている。


彼女には

  • 赤坂 早紀

姉御肌の女の子、酒を飲みたがり大酒のみを気取っているが梅酒以外を飲むとすぐに酔っぱらってしまう。

  • 金沢 魚子

六歳の幼女。悪気はないが相手の都合を考えず興味を持つ物に突き進む。

  • 紺野 棗

無口な少女。人と話すことが苦手で自分に自信がない。手品が上手。

  • 緑川 千百合

女性の服装に執着が強く、自分の想い描く服装をしていないと強制的に着替えさせる。男性は苦手。
という四つの人格が内包されている。
ショックを受けたり気を失ったりするとおそらくはランダムにそれぞれの人格が現れ、再びショックを受ける、あるいは眠ると元の梢の人格に戻る。
それぞれの人格の間では物語当初、記憶は共有されていない。


まず、物語とは関係がない側面から、作中の主要登場人物がこの病にかかっていることによる効果を考えたみたい。


最初に思い浮かぶのはハヤテのごとく!七日目で述べた「萌え」の細分化という側面である。この漫画のファンの中で、どのキャラクターが好きか、それは一人一人違うと思われる。そして、ヒロインに五つの人格を持たせることによって登場人物を増やさずにさらに細分化をすることができている。この作品の構成ではそれも重要な要素であろう。


次にそれぞれの人格の表現について述べてみる。人格が変わると口調が変わる。これはビリーミリガンでも使われている(ビリーミリガンはノンフィクションなので使うという表現はおかしいが)方法である。しかし、まほらばではさらに髪型を変えて見た目を変えるという方法を使っている。
この表現方法はリアリティという面から見ると問題はあるだろうが、漫画というメディアを使って多重人格の登場人物を描く場合、非常に単純かつ効果的な方法であると思う。絵を見ればどの人格が今表面に出ているのかがわかるのである。
リアリティという点では、漫画としてのリアリティとしては全く問題が無いと思われる。実際にはあり得ない髪型、髪の色の登場人物は他にもたくさんいるのだから。


さて、いよいよ物語の要素としての多重人格の役割について述べよう。


まほらばという漫画では、蒼葉 梢という少女の人格が統合されることが終了の十分条件になると思われる。物語中盤までは白鳥君と梢ちゃんの恋物語の側面が強いが、二人が結ばれた後に本当の物語が始まる。二人が結ばれることによって梢ちゃんの病が快方に向かうのだ。
ここで注目すべきは珠実ちゃんの言葉であろう

  • 「他のみんなとも分け隔てなく仲良くしなくちゃだめですよ」

この言葉がこの物語の全てを解決するはずだ。二人が交際している、その一点を五つの人格が共有することを突破口として、梢ちゃんの病が解消する道が開けるのだ。


この作品もハヤテのごとく!同様に、ある意味ではラブコメではない。二人の恋はあくまでも通過点、物語の目的地は違う場所にあるのである。

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短いよ・・・なんでだろう・・・