厳かな狂乱 長崎精霊流し

おはようございます。
予告通り長崎の話を書きます。


今年は東京近郊でこの日を過ごすことにしました。
何年に一度かは長崎でお盆を過ごすことにしております。定宿もあり、行くべき場所も決まっている、そんな旅です。


精霊流し。この風習はグレープ(あるいはさだまさし)の歌で全国的に知られています。しかし、その実態は歌で聞くのとは全く違います。長崎に住む方にとっては「にぎやかな祭り」で済むのかもしれません。他にもそんな祭りがあるのかもしれません。しかし、他の地域に住む私にとってはありえない祭りでした。


私は長崎まで墓参りに行きます。最初に行ったときに地元出身の方にレクチャーを受けました。
・墓参りは凪が終わった夕方に行く物だ。凪が終わるまでの間は暑くて大変である。
・墓参りに行くときは門前で売っている花火と爆竹を買っていかなければいけない。
・ロケット花火は手に持って発射しなければいけない。
・爆竹は人の足下にめがけて投げなければいけない。
そんなことを教えられました。
「あれ?なんかおかしいよな」と思いましたが、周りで墓参りしている人たちもだいたいそんな感じだったので郷にいれば郷に従えということで、そういうものなのだと理解しました。爆竹を箱ごとならすなんて日本ではあり得ないことだと思ってましたからびっくりですよ。


さて、そんなバックボーンがある場所での精霊流し
雰囲気は長崎新聞社のサイトにある動画でつかめると思います。
http://www.nagasaki-np.co.jp/kankou/douga/09/index.html
地元では、精霊流しのダイジェスト版テレビ番組も放送されます。それがなかなかシュールで…ビデオを取り寄せたいくらいです。
精霊船という船を模した電飾された車を海まで転がしていきます。その船に乗っているのはその年に新盆を迎える精霊です。精霊は海から西方浄土に帰っていく、そういう意味合いがあると思われます。
ん?これは仏教的な風習では?
そうですね。これは仏教です。キリスト教じゃありません。長崎というとキリスト教のイメージが強いですが、実際には仏教、儒教キリスト教、入り乱れています。それがなんとなく異国情緒が漂っている理由の一つでしょう。
さて、動画を見た方は「なんじゃこりゃ」と思われたかもしれません。とにかく、爆竹です。ひたすら爆竹です。間断なく爆竹の音が街に響きます。耳栓は絶対に必要です。そして、女性でスカートをはいている人は少ないです。軽いやけどくらいは覚悟しておいた方がいいでしょう。そんな一夜になります。
路面電車も一部区間運休になります。
動画サイトで紹介されている見物おすすめポイントには行ったことがありません。私たちがいつも見物するのは観光通から思案橋にかけてのエリアです。思案橋の交差点にいると、いろいろな船がやってきます。そして大きい船の場合は後ろを軽トラックがついてくることもあります。その軽トラには爆竹をはじめとする花火が満載されています。


みなさんは、爆竹で火柱が上がるのを見たことがあるでしょうか?私はあります。燃え残りの花火や爆竹などを段ボールに詰めて火種を投げ込むと、誘爆して轟音とともに火柱があがります。黒いキノコ雲ができます。聞いた話では路面電車の架線を溶かしたこともあるそうです。ありえない光景です。ここは長崎だよな…
大量の花火を消費して、街全体が火薬くさくなります。体も火薬くさいです。そんな体で駅前の生ビールの銘柄が選べる素敵なお店で酒を飲み特別な一日を終える、それが私たちにとっての長崎のお盆です。


精霊流しがこんなものだということを知らなくて「船を出したい」とか言っていたんですよ。長崎に住んでいなければ出せないという決まりがあったらしいので断念しました。正解です。


そんな狂乱の夜ではありますが、その裏には精霊を西方浄土に送るという意味合いがあることを忘れては行けません。船に乗った人との関係を断ち切る、そういうことです。流している最中の華やかさ、流し終わった後の何とも言えぬ空虚さ。長崎に住まない人間にとって、あり得ない一夜はそんな一夜です。


今日はこの辺で。

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