インターネット(Web)が持つ評論への可能性

七里の鼻の小皺 笑いの忌明けのために


感想・考察・批評・評論。おそらくこれらの言葉を混同して理解している人も多いだろう。私自身もそうだ。冒頭の文章を読んだ時、私は「評論だ」と即断した。なぜそう思ったかをここに書くとそれだけで無駄に長い記事ができるので割愛する。とにかく今は私が冒頭の文章を「評論」と受け取ったということだけを述べておく*1


紹介した文章は、「お笑い」についての評論である。本来ならばその内容について同意なり別の意見の呈示なりをするのが筋だがこの記事ではそれはしない。私は「お笑い」を消費者としてしか見ていない。つまり面白いか面白くないかだけを基準にして見ている。「お笑い」に限らず「漫画」や「推理小説」についても基本的に同様だ。主観的に自分が面白いと思うかどうかは判定できるが、なぜ面白いのかと言うところまで考えることはめったにない。漫画や小説についてはここにいろいろ書くようになり少しは考えるようになってきたが、お笑いは触れる機会が少ないこともあり*2考えることすらできない。そういう人間には内容に言及することは残念ながらできない。
にも関わらず、なぜこの文章に対して言及をしようとしたのか?それはこの記事の仕組みに感服したからである。


前に何度か書いていることだが、漫画や小説の評論を読む時に感じていることがある。それは、読者が知らない作品を引き合いに出して、対象となる作品を論じているところだ。研究者や好事家はそれで満足するし、逆にそうでなければ不満を持つのかもしれないが、私のような「ぬるい読者」は置いてけぼりを食らう。端から「ぬるい読者」は対象外にしているのかもしれない。しかし、現実には「ぬるい読者」の方が圧倒的に数が多い。そのボリュームゾーン向けに書かれた文章というのはそれほど数が多くないと感じている。
自然科学系の新書やブルーバックスで「誰もが理解しやすい良書」を書くことができるのはその道の第一人者であることが多い事から類推すると、それは非常に難しいことなのかもしれない。


今回取り上げた文章を読んで、インターネット(Web)を使うことによって、「ぬるい読者」向けの評論が提供しやすくなるのではないかと思い至った。


その理由はリンクの活用である。私もインターネット(Web)以外では成立しないような文章を書きたいと思い、実際に試してみたが*3、それはあくまでも自分の世界の中で完結した物であった。この記事では、あたかも紙の上で原典を引用するかのようにリンクを使っている。
具体的に言うと、Youtubeにアップロードしている動画を活用して引用をしている。活字の世界では不可能だ。インターネット(Web)があって、さらにそこに動画が蓄積されて、はじめて可能になった仕組みである。しかも、冒頭の文章では、それに重み付けもしている。システム上は全て動画の画面を貼り付ける事ができるはずなのにリンクだけにとどめる動画と、文中に表示する動画の両方を用意している。
こういう事ができてしまうのだ。当たり前のように思えるが、これは実はすごいことなのではないかと直感した。
ある分野に興味を持ち情報を集めようとした時に、原典を見ながら評論も読めるということだ。真剣に勉強をする人は原典にあたることをおろそかにしていないから今までと何も変わらないとおっしゃる方もいるかもしれないが、確実に時間短縮は可能だ。ある一定のレベルに到達する時間が短縮されれば、生み出された時間をそれぞれの個人が理解を深めることにあてることができる。そうすればより深い議論が可能になると言う良いスパイラルに入るのではないだろうか。


冒頭の記事ははてなダイアリーにアップロードされている。ということはキーワードリンクもされているということだ。文章を読んでわからない言葉があった時にはキーワードリンクでの簡単な解説も読むことができる。動画の活用ほどではないが、そのことも読者の理解の助けになっている。
2006/11/14の記事で、はてなキーワードの持つ魅力について触れてみたが、魅力以上に実益も大きいのではないかと感じた。


インターネット(Web)によって評論は変わる。冒頭で紹介した文章を読んでそう確信した。


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おそらく昔からネット上にあふれている論旨の記事をあえて書いてみました。何を今さらと思われるでしょうが、私が気づいたのは…。
あと、これに気づいたからと言って「俺もこういうことをやるぞ!」などとは申しません。言うは易し行うは難しなのですよ。例えば、今回呈示された文章をきっちり読んで理解するには最低1週間程度はかかるかなと思ってます。で、たぶん筆者はそれ以上の時間をかけているのではないかと…。いや、わかりませんけどね。俺だったら1ヶ月かかっても書けないな…。難しすぎる。将来そういう物を実験的に書いてみることもあるかもしれないですけれど、基本は今まで通りサイト内リンク(インターナルリンク)を多用して書いていこうと思います。外へのリンク使うよりは論旨が自分でわかっている記事だから全然楽です。
感想・考察・批評・評論については需要はなくて世間的に結論が出ている話だと思うので書かなくてもいいなんて思ったりしています。ただ、その世間的な結論と俺の感覚がずれている可能性もあるんですけどね(笑)。書くと恥をかきそうだ。


最後に。もし、nanari様の意図を誤解した記事でしたら本当にすいません。その場合は私の理解力の足りなさに原因があります。

*1:感想と考察については2006/8/222006/6/13にも触れています。

*2:テレビのお笑い番組はめったに見ません。ツボに来るネタが少ないから…。

*3:2005/11/27の記事など