ネギま!とハヤテ。初期設定の違いがもたらすこと

魔法先生ネギま!(20) (講談社コミックス)

魔法先生ネギま!(20) (講談社コミックス)

20巻の感想だけですとあっという間に終わってしまうので、この機会に書いておきます。




魔法先生ネギま!ハヤテのごとく!はある程度読者層がかぶっていて、比較されることも多いですが、私には全くカテゴリが違う作品に感じられます。今までも何度かそのことについて触れてきましたが、今日はそもそもの初期設定にスポットを当ててみようと考えています。


まずは魔法先生ネギま!の話から行きましょう。
この作品の特徴は言うまでもなく「名簿」の存在です。連載当初に主要登場人物のほとんどが呈示されています。その後何人か重要な登場人物が出てきますが、最初の印象が圧倒的です。
次にハヤテのごとく!。こちらは対照的です。
物語の始まりで紹介された登場人物はメイン3人だけです。その後13才グループの存在が明かされ、4巻以降ようやく16才グループが徐々に登場し始めます。


この違いによって、この2つの漫画は全く違う展開を見せています。


魔法先生ネギま!では、その呈示された登場人物、つまり2−Aから3−Aに進級した女の子たちの間には既に人間関係ができあがっているんですね。それを作中で紹介している、場合によってはその関係を知らない他の女の子に教える、ばれると言う形で読者にも知らせているんですね。
神楽坂明日菜が魔法世界と関わりがありもともと強力な魔力を持っていたけれど記憶を失っていたとか、近衛木乃香が東洋の呪術を受け継いでいて明日菜とは方向性が違うけれど強力な魔力を秘めているとか、桜咲刹那木乃香を守る存在であるとか、その辺りの設定はすべて物語が始まる前から変わっていない、つまり主人公のネギが日本に来なくてもその設定自体は生きていたのです。
ネギが日本にやってきたのは単なるトリガーです。そもそも「麻帆良学園」という「普通の世界」と「魔法世界」とのインターフェース的な場所にやってきて、さらに2−Aというクラスに配置されている時点で、それら裏の設定が、もしネギがやってこなければ別のトリガーで発動しただけかもしれないと思わせます。
そして、少しだけ20巻にも触れると、少女たちが既に人間関係を構築していたから極めて自然にみんなでウエールズに押しかけることが出来るんですよ。ハヤテのごとく!ではそういう展開は難しいんです。


ハヤテのごとく!ではそこが違う。
13才グループと白皇学院組それぞれの中での人間関係は既に構築されていました。しかし、13才グループの代表格でありメインヒロインでもあるナギが引きこもっていた。ハヤテが物語に登場しなければ、彼女は2年生に進級した今でも白皇学院の生徒たちとはほとんど交友を持たなかったかも知れません。
さらに特徴的なのが西沢歩でしょう。彼女はハヤテがナギと出会わなければ、ナギとは絶対に出会っていないんです。物語の中で人間関係が構築されるんですよ。もちろん隠された関係もあります。ほぼ明かされていると言ってもいい所を例にすると家庭教師を桂ヒナギクの姉雪路は西沢歩の家庭教師をしていたということでしょう。しかし、思い起こしてみてください。雪路が家庭教師をしていたことと、西沢歩桂ヒナギクが友人・ライバルになったこととは全く関係がないんですよ。ハヤテを介して仲良くなった女の子が、たまたま雪路を介して間接的に既に関係があったってだけの話です。


最近のハヤテのごとく!魔法先生ネギま!20巻と比較してみます。3−Aの生徒たちはなんとなくウェールズについていったというか押しかけることが出来ましたけれど、白皇学院のイベントとして開催されている高尾山ハイキングには西沢歩は参加できないんです。彼女は白皇学院という世界では部外者だから。そして2年生になるという絶好のタイミングで西沢歩を白皇の生徒にしなかった事から類推すると、それは物語が終わるまで変わらないと考えています。西沢歩には西沢歩の世界があり、その世界と他の世界がインターフェース(ビデオ屋とか喫茶どんぐりとか)を介して交流することはあっても、西沢歩自身が他の世界の住民になることはないということです。
魔法先生ネギま!では、なし崩し的に一般世界と魔法世界との垣根が無くなっています。それは、一般世界と思われていた麻帆良学園中等部2−A〜3−A自体が一般世界と魔法世界とのインターフェースとして機能していたからです。クラスメイトの女の子たちは、物語が始まった時点で、本人が同意し期していたかにかかわらず既に両方の世界に属していたのですよ。




結論を書きます。
魔法先生ネギま!では物語の骨格はそれが始まる前にできていて、それを明かすことによって話が進んでいきます。
ハヤテのごとく!では物語の骨格を作りながら進んでいます。物語を作ること、それ自体が物語になっているといってもいいでしょう。


どちらが優れているとは一概に言えませんし、読者の好みによってどちらにどういう感想を持つかはずいぶん違うと思います。
魔法先生ネギま!ハヤテのごとく!の違いは、過去が明かされていく物語と未来を紡ぎ出す物語の違いなのかなと私は考えています。


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