田中正大著『東京の公園と原地形』

東京の公園と原地形

東京の公園と原地形

本屋に行かなければ出会うことがない本がたくさんあるように、ネットがなければ出会えない本もきっとあるはずです。この本は、ネットがなければ一生存在を知らなかった本です。今日、この本の感想を書ける自分は幸せです。


本の内容は想像通り。というか予想以上でした。公園の原地形といったら「谷戸」がメインになるだろうと思っていましたがその通り。今、公園として残されている緑地がかつてどのような場所だったのか、公園になるまでの経緯、周辺の状況などに至るまでが記述されています。
私たちにとって当たり前の風景が、そして、自然をそのまま残してこうなっていると思っている風景が、実は人間によって産み出されたものなんですよね。
有名なのは明治神宮の森でしょう。設計された森です。この本では触れられていませんでしたが、夢の島の森は明治神宮の森を手本にして設計されているとのことなので、私が死んだあとどうなっているのかとっても楽しみです。みることはできないけれどねぇ…。


いい本です。ネットでしか手に入れられないと思うけれどその価値はあった。いい買い物をしました。




ただ、著者の考えには賛同できない部分もあるんですよ。公園ってのは諸刃の剣で、それ以前にあった貴重な自然を破壊するという一面も持っています。この本の中にある場所を例にしてもいいのですが、実際目の当たりにしたという意味で自分の地元を取り上げましょう。
松戸市に「21世紀の森と広場」という公園があります。
http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&ie=UTF8&ll=35.802343,139.94035&spn=0.006961,0.009291&t=h&z=16&om=0
私が松戸に引っ越した時、この公園はまだありませんでした。その頃は谷間は田んぼで、何件か家が建っていました。
近所の人と一緒に何度か遊びに行ったんですよ。斜面から湧き水が流れていてセリが自生していました。そこから流れる小川の水は強烈に澄んでいました。


その風景は公園になって失われました…。立派な池と広場になってしまいました。


当時の自分はずいぶん傷つきました。結局公園なんて人間が自分に都合のいい部分だけ切り出したエセ自然じゃないかと思いました。その考え方には決して自分一人で到達したわけではなく、正しく読みとっているかははなはだ疑問ではありますが新井素子の『絶句‥…』がベースとなっています。
しかし、よく考えると最初に私が触れた風景も、今流行りの「里山」だったんですよね。人間が作り替えた自然です。だから、公園になるのも里山のままにしておいたのも大差ないのかも知れないですね。